チームで挑むDE&I
東京エレクトロン株式会社は、これまでLGBTQ+に関する様々な取り組みをされてきました。
なぜこのような取り組みを続けるのか、その先に目指すものは何か、株式会社アカルクとの対談を通じて、東京エレクトロン様の想いにせまります。
背景と具体的な取り組み
堀川:LGBTQ+の取り組みを行 うことになった背景を教えて下さい。
中村:2019年の4月に当社で D&Iグループが人事で発足され、 当初は多様な人材の獲得、女性活躍を中心に行っていました。2020年に世間でSOGIハラが問題となり、 会社でもLGBTQ+について取り組む必要があるとグループで考えたことがきっかけです。 また、2019年にD&Iグループ が発足されたときから、グローバルアンバサダーを作っていて、全国26 社、18か国、83拠点のDE&Iを推進する活動をしています。当社には色々なグループ会社がひとつの大きな価値を生み出す「One-TEL」という考え方があります。そのため、日本ではまだ取り組まなくてもいいことでも、視野を世界に向けてみると取り組むべきことであると考えました。
堀川:ワンテルとは何ですか?
中村:「One-TEL」とは、全国、世界にある東京エレクトロングループが連携してひとつになることで、最大の価値を生み出すことができるという考え方です。「One-TEL」の考えの下、日本で取り組むにはまだ早いようなことでも、物事を世界基準で捉えることで、LGBTQ+の取り組みに推進力を持って積極的に進めることができるのです。
堀川:現在、LGBTQ+に関する具体的な取り組みはどのようなものをされているのでしょうか?
中村:堀川さんにも協力していただき、勉強会を2回実施しました。1回目は、人事向け、2回目は社員向けで行いました。2回目は特に質疑が活発に行われたこともあり、LGBTQ+に対する社員の関心度の高さを実感し、私たちはそれをしっかりと受け止めなければと感じました。
堀川:なるほど。社員さんの関心の高さも大きかったのですね。他にも何か実施された取り組みはありますか?
中村:勉強会以外では、再度アカルクさんにサポート頂き、社外相談窓口の設置や人事部員向けのLGBTQガイドラインの発行をさせて頂きました。
堀川:その節はありがとうございました。実際、取り組みを行ったことで効果はありましたか?
中村:相談窓口については中々相談は来なかったものの、人事のHPにLGBTQ+向けの相談窓口サイトを新設した際、他のジャンルの相談窓口がある中、アクセス数が一番多かったです。LGBTQ+の取り組みを「知りたい」と思っている人が多いからこそ、このような結果が出たのだと思います。
堀川:確かに相談窓口は相談があるからいいという訳ではなく、いつでも相談できる状態ということが大事かもしれませんね。
ホワイト:制度面については、同性パートナーの定義の制定と慶弔関連制度適用を実現しましたが、社内の中では反対の意見はあまりなかったように感じます。というのも、堀川さんから頂いた他社事例が説得力があり、効果があったのだと思います。
自由と挑戦の風土
堀川:お話を伺っていると、お二人は楽しそうにLGBTQ+の取り組みをされているような印象を受けたのですが、 ここまで継続してできるモチベーションはどこからきているのでしょうか?
ホワイト:私は海外に住んでいたこ ともあり、マイノリティーとして過ごしていた時期があります。「周りと違う人」という認識をされたこともあ り、辛い思いをした経験があるからこそ、受け入れてもらえた時はうれしかったことを覚えています。LGBTQ+の取り組みを推進することによって、一人でも「働きやすい」 と感じていただけるのであればこの活動に意義があると思っています。
中村:私は日本に生まれ日本で育ち、LGBTQ+についてよくわかっていないし、実体験もないのに、推進していいのだろうかという葛藤も正直あ りました。しかし、「LGBTQ+に取り組むのは当たり前ですよ」と後押ししてくれる仲間がいたおかげで取り組みを継続して実施できたのだと思います。これができるのも、当社の自由で挑戦させてくれるような社風が関係しているのかもしれないです。元々、当社はベンチャー企業で、自由な精神というものがあり、今後も受け継がれることだと思っています。
堀川:なるほど。御社の社風を上手く活用しながら活動されているんですね。
ホワイト:そうですね。会社としても、競争力を高めていくために、一人ひとりが実力を発揮できるような環境が必要であり、その環境を整えるのは人事の役割だと思っています。なので、会社の貢献という部分と社員の働きやすさの両方の実現を目指しています。
アカルクを選んでいただいた理由
堀川:LGBTQ+に関する取り組みを行っている団体や企業がある中、なぜ弊社を選んで頂けたのでしょうか?
ホワイト:的確なサポートや、世の中の状況を冷静に見てリードして頂けたことが、非常に心強いと感じたのと、堀川さんのお人柄が本当に素敵だったからです。何より信頼関係を構築できるかが一番大事ですよね。LGBTQ+の取組をしていく中で、賛同してくれる社員がいる一方、そうでない社員もいます。それでも私たちは取り組みを推進していく必要があると思っています。アカルクさんのような信頼できるパートナー企業がいることで、周りの動向や公的なことをサポートして頂けるところは非常に安心感があります。また、私たちが躓くポイントを理解していただける点も、長くリレーションシップを続けさせていただいている理由ですね。
5つのTEL Valuesとは
堀川:会社で大事にされている価値観などはありますでしょうか?
ホワイト:社内で共有している5つの「TEL Values」というものがあります。「誇り」「オーナーシップ」 「自覚」「チャレンジ」「チームワーク」 これを実現するために日々努力し、達成されると企業価値向上に繋がる、いわゆるクレドのようなものです。 DE&Iを進めるにあたり、この5つが非常に大切です。バリューの実現度 と自身のバリューの発揮度はある程度の相関性があると考えています。そのため、私たちは、社員一人ひとりが 持っているバリューが実践できるような環境を整える努力をすることが必要だと考えています。他にも、このTEL Valuesは自分がぶれてしまいそうなときに、立ち戻る場所としての役割もあります。何か行動するときにもこれを意識した行動をする、会社の共通言語であり、私たちはこれからもこのTEL Valuesを意識した物事の進め方をしていく使命があると考えています。
堀川:ありがとうございます。このTEL Valuesが今の東京エレクトロン様を作り上げているんですね。
▲5つのTEL Values
東京エレクトロンが描く未来
堀川:東京エレクトロン様が今後目指すことを教えて下さい。
中村:社内の環境を整えることと、 社員の理解を促進することの二軸を継続して活動することが重要だと考えています。ホットライン(社外相談窓口)は実際に使われている方がいない状況ではありますが、それを整備しているか否かが重要で、整備されていることでの安心感が社内にあると思います。カミングアウトするのはご本人次第ですが、少なくともLGBTQ+に理解のある人が人事にいるということは働く上で、心理的な安心・安全を確保できると考えています。今後も、積極的に整備を進めていくと共に、LGBTQ+だけで はなく、様々な切り口からDE&Iの理解を深めてもらえるような施策を実施していきたいです。他にも、これらの活動を社外にも発信することで、TELの魅力をお伝えしていきたいと思っています。
堀川:二軸の継続。大事な考え方ですね。
中村:より良い企業となるための必須条件だと考えています。一人ひとりの小さな行動により生まれた小さな成果が、周りの人の行動にも伝播し、好循環を生み出すことがあります。私たちはその力を信じ、当社をより 良い企業へ成長させるために、チームで取り組みを進めています。私たちの取り組みが、会社の、そして社員それぞれの成長に繋がるよう、今後もDE&Iの推進に尽力して参ります。
対談者紹介
中村 知永子
東京エレクトロン株式会社
人事部
労務・コンプライアンス グループ
DE&I 推進グループ
ホワイト 美穂子
東京エレクトロン株式会社
人事部
HRBP グループ
DE&I 推進グループ
堀川 歩
株式会社アカルク
代表取締役社長
LGBTQ をはじめとする多様な人が働きやすい職場環境作りを行い、全国各地で年間100本以上研修や講演を行っている。
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