アライコミュニティの先に目指す未来〜人として尊重する「姿勢」〜
アッヴィ合同会社様とアラガン・ジャパン株式会社様は
なぜLGBTQ+の取り組みを行うことになったのか。
そして何に取り組み、どこを目指すのか。
株式会社アカルクとの3社対談をお届けします。
組織で取り組む -自ら手を上げるということ-
堀川:御社がLGBTQ+の取り組みを行うことになった背景をお聞かせください。
田島:アッヴィでは、以前からグローバルでLGBTQ+を含む多様性の理解を進める活動(EED&I)に取り組んでいました。
2020年にはD&Iコミッティという組織が立ち上がり、2022年にはそれを進化させ、
従業員が率先的に活動するERG(Employee Resource Group)という組織が立ち上がりました。
その中で
「私たち社員一人一人が、LGBTQ+をひとつの個性として認め合うことで、ありのままの自分で活躍できる会社となる。
カミングアウトしてもしなくても心地よい環境に。」
をビジョンに掲げ、プライドというチームが発足しました。
以前はボランティア的な取り組みでしたが、ERGの体制となり経営の関与も高まり加速されました。
堀川:ERGは社員からの声でできたのか、会社の方針で立ち上げたのか、どういう流れでしたか?
久保田:グローバルの体制に倣い、経営が全面的に後押しするグループとして立ち上がりました。
ERGはプライドを含め、「ジェンダー」や「ジェネレーション」など4つのグループから構成されていますが、
どのグループに所属して何をやりたいかは、社員の自主性に任されています。
それをビジネスゴールに加えることで責任を持って進める形になっています。
堀川:今年で3年目ですが、なぜ当時起業したばかりのアカルクと組もうと思ったのでしょうか。
久保田:2020年にLGBTQ+について社内で学べる機会を作ろうとE-learningを作成しようとなり、
アカルクがサポートできるということで、お願いしたのが最初のきっかけです。
その中で、マテリアルの作成だけでなく、どうして活動していくべきかの助言をいただくことが増えました。
当事者としてどうなのか、声を社内から拾うことは非常に難しいことで、的確な意見をいただけることは貴重な機会でした。
幅広く多様性推進をサポートできる点と、堀川氏が当社の様々なニーズにフレキシブルに対応してくれる点を魅力に感じ、
パートナーシップを組みました。
深い理解と高い感度 -無関心を無くす-
堀川:具体的にどのような取り組みをされたのか、教えてください。
田島:社員の行動変容の成果として、社員の中にアライを増やすことを目指しました。
同性婚・事実婚を法律婚と同様に扱うといった社内人事制度の改定や、
外部相談窓口の設置により目に見える形でLGBTQ+の社員をサポートできる体制を整えました。
啓発活動として、LGBTQ+について理解を深めるためのスライドキットの作成、社員向けのウェブセミナーの開催、
社員が集まる場において外部講師を招いたLGBTQ+の研修などを展開してきました。
その中でアライになることを呼びかけ、実際にアライを表明してくれた仲間には
レインボーストラップやシールなどを配って身に着けてもらうことで、より多くの社員の目に触れる機会を作りました。
久保田:社外に向けては4月の東京レインボープライドへの協賛およびパレードへの参加、
Business for Marriage Equalityへの賛同表明などを行ってきました。
また、LGBTQ+の啓発に取り組む団体や他社とも協議を開始しました。
これらの活動を通じて、今年も2年連続でプライド指標のゴールドを受賞することができました。
2023年は、これらの活動を社内外に向けてさらに発展させていく予定です。
堀川:実際に取り組んだことで、効果や結果はありましたか?
田島:アカルクと取り組み、様々な活動の目的や手段が明確になりました。
例えばアライを増やす目的で行ったセッション内容では、様々な背景の視聴者に対して何を訴求すべきなのかを意見いただき、
視聴者満足度も高かったです。
またプライド指標にむけては、何がアピールできるのか、どの点を補強することが必要なのか、アドバイスいただきました。
それが2年連続のGold指標の取得につながり、Rainbow取得の道筋も明確になったと思います。
久保田:毎年全社員を対象に、会社の様々な活動に対するアンケートを取っています。
その中で「アッヴィ・アラガンという会社が多様性を認め、同性婚を認め、
当事者の方々を受け入れている会社であると感じますか」のような質問があり、その割合が上がってきています。
これは人事からも評価をいただいている部分です。
この割合がたとえ少しであっても上がるということは、
全社員のうち既に理解を示して好意的だと思っている仲間が更に増えていることであり、非常に大きな成果だと感じています。
田島:また、社内の意識アンケートで行動変容が起こらなかった社員に理由を聞いていますが、
凄くポジティブな回答が返ってきています。
「何をしていいか分からない」「周りにいるのかどうか分からない」といったコメントで、LGBTQ+に無関心ではないんです。
間違いなくポジティブに動きたいからこそ、何をしていいか分からないと答えているのだと思います。
今まで無関心な社員がいたとしても、考えがポジティブに変わってきて、
自分たちも取り組みたいという気持ちが徐々に出てきている印象を受けています。
堀川:このような活動を推進できる秘訣やモチベーションを教えてください。
久保田:社員一人一人の意識が高いとは感じます。
強制ではなく「こういう機会があり、普段の業務時間を割いてでもしっかりと取り組みたい人」という形で手を挙げており、
その時点でそのタスクチームに入っている社員は、主体的な活動をする仲間になっていると実感しています。
また会社のビジョンとして「全ての社員がありのままで、差別を受けることがない環境で活躍することで、
ビジネスの成長も実現できる」ことを目指しており、
そこに向けて自分たちは何ができるのか?やっていることに誇りを持っているのか?
ということが一番の原動力になっていると思います。
田島:私も同じく、社員が様々なことに積極的に関わるカルチャーだと思います。
その中で、もっと会社を良くしたいという風土がその土台としてあると思います。
去年から、心理的安全性の重要性が全社で再認識され始めています。
特に心理的安全性を考えた時に、LGBTQ+当事者の方を含めて他にも様々な課題があると思いますが、
そういうところを含めて心理的安全性を目指そうと全面的に押し出している点に変わってきているなという印象は
特にあります。
堀川:普段の会議に参加していても、業務を進める部分と尊重し合う姿勢が絶妙なバランスで成立していますよね。
田島:普段から当たり前になっているかもしれません。
会社の原動力は成長だと思っていて、ダイバーシティが成長につながると思います。
個人の成長がないと会社の成長はあり得ないですが、個人の成長はスキルや経験だけでなく、
心の成長が絶対大事だと思います。
その中で、相互間の理解や尊重の気持ちは培われてきており、全員で成長する文化が絶対的にあると思います。
特にアッヴィは新しい会社で、急速に大きくなる中でさまざまな多様性を積極的に取り入れてきました。
その中でさらに成長しよう、いいところを取っていこうとしてきました。
このようなリスペクトの根底には、成長が絶対的にあると思います。
堀川:取り組みをしている中で感じる、現在の課題は何でしょうか?
久保田:取り組んでいるメンバーは意識も高いですし、話をする環境にあるので分かり易いですが、
社員の巻き込みがまだ足りてないなと思っています。
このような話が色んな場所にいる社員同士でも起こることが、目指すところです。
我々にも見えていない部分はたくさんありますが、いろんな取り組みを形にはしてきているので、
「その形にしたものがどれだけ波及していくか」が次のステップだと思っています。
意識なく尊敬する -D&Iの目標-
堀川:取り組みを通して、目指すビジョンをお聞かせください。
久保田:「パーソナリティの違いを意識せずに仕事をする」というスタンスが当たり前になることが、
目指す世界だと思います。
今はきっかけを作るべく、意識をしてもらえるような施策をしています。
ですがそうせずとも、日常生活の中で当たり前の感情として、
当たり前の行動として相手を尊重するスタンスが染み込んでいることが目指す世界でしょうか。
そうなれば我々の活動はしなくても良いことになりますが、そこまで辿り着けば言うことはありません。
田島:相手を思いやる意識が徐々に行動にも繫がると思っており、「私もアライです」と表明することが大切だと思います。
全社員が相手をリスペクトして仕事ができる、そういう世界にしていきたいと思います。
堀川:お二人にとって、アライとは何でしょうか?
久保田:「私はアライです」と表明する時は、おそらく流れの中でもまだ最初の方だと思います。
アライであるないに関わらず、当たり前のようにアライの行動ができる会社になりたいと思います。
もちろん世の中がそうなると一番いいですが、まずは自分の会社で全ての人が相手の性的指向・性自認を含む
パーソナリティの違いを尊重してコミュニケーションができるようにしたいです。
そのような環境を作りたいと一緒に思ってくれる仲間が私なりのアライだと思います。
田島:相手を思いやり、考え方を否定せずに尊重し受け入れる。
人として大切な姿勢ですし、アライは「品」という言葉で表現できるかも知れません。
行動はなくとも、気持ちだけでも私はいいと思います。
気持ちがあっても、間違えた行動をする人もいるかも知れません。
行動は学んでいけばいいですし、まずはそこから始めるべきだと思います。
堀川:本日は貴重なお話、ありがとうございました。
対談者紹介
堀川 歩
株式会社アカルク
代表取締役社長
LGBTQをはじめとする多様な人が働きやすい職場環境作りを行い、全国各地で年間100本以上研修や講演を行っている。
田島 正浩
アッヴィ合同会社
カスタマーエクセレンス本部
ブランドチーム
パートナー統括部長
製薬業界に約20年従事しており、2019年アッヴィ合同会社に入社。2021年より現職。
久保田 俊之
アラガン・ジャパン株式会社
メディカルアフェアーズ本部長
免疫学で博士号を取得後、コンサルティング業務を経て製薬業界に従事。2021年よりアラガンに入社。
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