【③事業を進めるうえでの課題。起業家、組織のリーダーとして】
須藤:事業を進めていく上で課題はたくさんあるんです。成長していく度に課題は変わってくるんですけど、リアルな話をするとマネタイズは大変です。特に社会課題の解決で言うと、そもそも課題の可視化をさせつつそこに対する解決も同時に行っていく必要がある。パワーを使うんです。いろんな方を巻き込んで進めていかないと実現できないものですから。本当に大変です。たまにLGBTを商売にするなとかって声をいただくこともありますが、でも課題の解決をするためにはNPOさんとかいろんな方のアクションは必要だけど、株式会社として一民間企業としてチャレンジをするからこそ変わっていくものもあるんだと体感しているので、いろんな方に知っていただくのが大変だなと日々感じています。
ー落ち込んだときは?
須藤:悩んじゃうときは大概、誰かのために何かをやっていると感じる自分がいるときなんですよ。でも違う。自分がやりたくてやってるわけ。自分が生きやすい社会にしていきたいと思う中で、待ってるだけじゃなくてまず自分のできることからチャレンジしていこう、その延長に他の方々もハッピーになれたらもっといいよねって考え方で進めているので原点に返るというか初心に帰ることを心掛けているのと、たまには新宿二丁目の諸先輩方の話を聞きながらお酒を飲むこともあります。そういう場所を持つのは大事。だって起業家だって一人間だもの。僕は自分で切り開く道をガンガン進めていく中で、後に続く子たちが増えれば面白いなと思うしそういう世界があってもいいかなと思うけどまずは自分のできることからチャレンジしていこうと考えています。
堀川:進めていくうえでは悩みの連続です。社会課題をビジネスの力で解決する、かっこよく聞こえるとは思うんですけど、本当にこれをビジネスでやっていこうと思ったら泥臭いことばかりの積み重ねなんです。ただやっぱり今課題に感じてるところで言うと、うちの場合は一社一社に入り込んでその企業が求める風土に合わせてやっていくのである意味オーダーメイドにしているので仕組み化しづらい、人に依存してるモデルになっているのは事業面の課題です。組織面に関しては、オーシャンズ11って映画ありますけど、みんなで得意を生かして銀行強盗する、そういったミッションのもとスペシャリストが集まってる。本当にバンドを組むような感じでプロジェクト単位でスペシャリストが集まってやってくことなので、自分が全部のリーダーというよりプロジェクトごとにリーダーがいるので、リーダーとして背負っているというよりは学ばせてもらったり見習ったり、事業面も組織面も今までに無いものをつくる難しさがある一方で面白さややりがいがあるから原動力になっているのかなと。
合田:私はまだ起業したてでこれからも大変なことがたくさんあるんだろうなと思うんですけど、始めたときは課題があるってことにみんな気付いてないところから始めないといけない。潜在的な悩み。
当事者であっても「こういうもの」って思ってる人もいる。「私はゲイだから大変で仕方ない」とか。そうなるとマジョリティからも見えてこないので、「こういう風にやればもっとうまくいくかもしれないよ」という環境、風土づくりから始めなければいけないと思った。
後は人を集めるところ、組織として。たとえばアプリ作ってるので優秀なエンジニアを雇おうとするとお金がかかる。月に何十万、何百万掛かって、ランニングコストだけでこんなに掛かるのにやっていけるの?と悩むと思うんですけど、そこはビジョンで引っ張りやすいのはいいところだと思ってる。たとえば「今すぐのお金にならないかもしれないけど、社会が変わる様を一緒に見ていかない?」とかそういったビジョナリーなところで風土とか会社のカルチャーを作っていく中でフィットする人を頑張って口説いてく、大変だったんですけどそういった仲間の集め方ができるのはいいところなのかなと。
ーとはいえ、ビジョンをときどきは思い出したり共有し合ったりする?
合田:ビジョナリーなこと言わなきゃ、私たちの幹がそこだからそこに立ち返ろうねとは良く話してます。
星:個人的な話で、社会起業家とか起業家ってだけでものすごく強い人と思われたりする。サンドバッグにされたり。清廉潔白な存在とか。そういった二面性が、自分が社会に求められる社会起業家を演じないといけない場面がすごくある。そういう風に見えてるかもしれないけど、本当の自分との乖離が激しくなってしまって、それは個人的に悩んだし、乖離が出てきちゃうと24時間365日保てないので、特に社内のチームメンバーに対してそうじゃない一面が出たときにがっかりさせちゃったり、うちってこんなダイバーシティ言って事業やっているのに代表だらしない、みたいなのがあって悩みました。でも取り繕った自分でいるだけじゃなくて、社内ではリーダーですけどリーダーだからこそみんなに弱みを見せたり、こういった横のつながり、昔はもっと孤独に一人で細々とやってたから。
須藤:起業家って孤独な時期がある。社長だからこう、みたいな価値観を押し付けられてきたから社長と呼ばれるのがいやだった。「須藤って呼んで」ってときもあった。
星:本当はそんなことないよ、って知っていただきたいし、それで目指す人にとってもハードルが下がるんじゃ。
【④私と会社、これからの未来。会社、経営者、個人としてのこれから。】
堀川:うちの会社は「人と組織をアカルク照らす」を企業理念に事業を展開してるんですけど、私自身事業を取りくんでて思うのはこれから未来を作っていく上で選択肢と機会を増やしていくことが一番大事。
これやりたいと思っても得られる選択肢が無い、機会が無いってなると、やりたくてもやれないことは自分がとても悔しかった。選ぶのは本人だとしても、無数の選択肢、たとえば起業家というキャリアもあるよ、もし失敗してもこんなことができるよ、何回失敗してもやり直せるんだという選べて失敗しても立ち上がれてサポートする人や社会がある社会をつくっていきたいし、自分もこれから失敗するかもしれないし今も正直怖さはあります。
今回イベントをしたことによってどんな反応があるんだろうとか。それでもまた、こういうことやってみよう、こういうメンバーたちとさらに面白い世界つくってみようって何回ダメでも挑戦できることが、いろんな人が同じように機会がもらえる社会をつくっていきたいと思います。
合田:うちの会社は「らしく生きるを、もっと選びやすく」がビジョンなんです。
その社会を作るのは、当事者だけで頑張ることじゃもちろんないですよねって思ってるので、それを叶えるのって途方もないな。大きなこと掲げすぎたなと思ってますが、それに向かってやりたいなとかやれるなって思うことをできる体力をまずは組織として付けていかなきゃなというのが直近の未来です。うちの会社に集まってくれる人たちはうちの会社のことを居場所だと感じて働いてくれてる方ばかりなんですが、その居場所をもう少し大きくしていくというか、たとえば発信した先とかイベントやった先でも居心地いいなって思う人が増えていったらな、場づくりをしていけたらと思ってます。
あとは、女性ジェンダーで会社やってるぞって人ってまだ女性起業家と言われたりする。私も自分の投資してくださってる方の集まりに行くと自分だけ女性の時も。その中でも「自分はセクシャルマイノリティかもしれない」方ってさらにハードルが高いのかなと思ってるので、出来るぞってところを見せていけたらと思ってます。
星:うちの会社のビジョンも、「差異を彩に」と掲げてまして、違いを強みに変えていこうってものって企業だとダイバーシティって言われるんですけど、会社とか経済的な価値に還元できなくてもそれが彩になってその人の持ち味や誇りになってほしいと思っていて。LGBTの就職、転職の課題解決やってる中で、LGBTかつ障害を持っていたり、女性ってことでジェンダーのギャップを感じていたり外国人の方だったりさまざまなマイノリティの方と出会ったときに、決してわれわれがLGBTだけをやっていてもその人たちの根源にある生きづらさって解決していかないなと。
もっといろんな人の違いの奥底にある課題を解決したいなというのが大きな思いとしてあります。
私は今のこうした場があったり、若手社会起業家ってことで、5~6年前の起業したときはあまりそういった存在の人がいなかった。
会社って感じでやってる方いなかったけど、今こうして話せるのがすごいことだなと。社会の変化が急速に起きていて、不可逆な流れ。インターネットやテクノロジーの発達が人の価値観をどんどん変えていって、一人ひとりがフラットに、違いを持っていても昔は工場とかで同じ作業を正確にやることに価値があったけど今はソフトウェアの世界なので、一人ひとりが違いをその人の強みや持ち味に変えていける世界が、もうそこ、できちゃうのにやらないのはもったいない。
私は不可逆な、この重力のような流れを10年でも20年でもいいから早めることで自分が子どものころ感じてたような、「自分は生きていけないのかな」「一生孤独なのかな」って子どもたちや次の世代が思わないような世界を少しでも早める。これに自分の人生をささげていきたい。
須藤:IRISのビジョンは「自分らしく生きられる社会の実現」ということで、本当の意味でこれを達成していきたい。
これはLGBTだけじゃなくて貧困だったり外国籍の方だったりシングルマザーとかいろんな方がいろんなことに対して生きづらいなと感じている。それを少しでも減らしていく社会にしたい。まず一企業として大きなインパクトを与えるという意味で、IRISは必ず上場させようと思ってます。
一同:おお!
須藤:時間は掛かると思いますが、昔はLGBT起業家が食べていくのは難しいとかよく言われましたがそんなことは無いぞとまずは自分が体現して次世代につなげていきたいです。
ー明確な目標を掲げるのは勇気のいることですが、すごく心を打たれました。後半はぶっちゃけトークをしていただくんですが、その前に今回の視聴者の方にメッセージを。
須藤:自分自身が当事者だということで悩んだり葛藤する時期ってあるんじゃないかと思います。僕自身もゲイだと思ったときに自分の人生どうなるのかとても悩んだんですが、諦めずにチャレンジしたり、自分自身のことをまず自分が理解しようと思うことによって自分の道は切り開いていけると思うので、楽しい人生待ってるんだよということでこれを一つの機会としていただければと思います。
星:LGBTじゃなくても、何か生きづらさを感じてる人は増えてきたんじゃないかと思うんです。子育てをするとか介護をする中でも、なんでこんなに生きづらいんだろうって。きっとそれっていうのは怒りやネガティブなものになるし、自分もそう思ったし、今でもなります。ただ、社会起業っていうのは誰かのためだけじゃなくて自分のためにもできることだと思ってて、もし生きづらさを感じることがあったらそれってたぶん世の中を変えるきっかけとかチャンスにもなるものなんだっていうのを知ってもらうだけで選択肢が広がると思うんです。こんな世の中、自分が生きづらいのは世の中のせいだって。もちろんそうだし、社会のシステムの中で感じてるんですけど、それを変える手段が今どんどん増えているし、変えることはきっと皆さんもできると思うので、その気持ち自体を大切にしてもらえる機会になったらうれしいです。
合田:たとえばセクシャリティやジェンダーの課題って自分が生きていく中でたくさん直面すると思いますし、嫌になることもあると思うんですけど、今ここにいる4人はそれをバネにというか明るい方向に向かって新しいものを作って新しいサービスをもって良くしていく方向を選んだ。そういう選択肢もあるし、私たちはそういう選択肢をもっと選びやすい社会を作っていきたいと思っているので、もし何か話聞きたかったりしたらみんな聞いてくれると思うので見かけたときは話しかけてください。まずはご自身の半径5メートルから生きやすい社会に変えることがまずはいいのかなと思っていて、それって自分も変わらないといけない、発言しないといけなかったりするんですけど、思いの似た人はいるので、今SNSもある時代なので、この人だったら自分と一緒に居心地の良いところを作れるんじゃないかって人とサークルをもっていくのもおすすめですし、働く場所としてLGBTだったり障害者だったり外国籍だったりにとって働きやすい環境を追及しているような会社もあります。自分の身を置く場所をどうか、選べるといいのかなと思っています。
堀川:ご視聴いただいてる皆様の中には、LGBTQ+の方もいらっしゃれば障害のある方などいろんな背景のある方がいらっしゃると思いますが、今日話を聞いてて私もそうだなと思ったのはいい意味でしんどいときはしんどいって言っていいですし、強く頑張ろうと思う必要も無いんだろうなと思っていて。私たちもたとえば今こんな風に明るくしゃべってたり過去の話として話してますけど、日々の中で葛藤したり未来の中でも悩ましいことたくさんあるんですけど、私自身大切にしてる言葉がありまして、喜劇王のチャップリンという方がいるんですけど、彼が残した言葉で「人生はクローズアップで見れば悲劇だ。ロングショットで見れば喜劇だ」と言っていて、まさにそうだなと。自分も過去のしんどかったこと、今のしんどいこと、その場面だけで見るとしんどいけれど振り返ったときに笑い話になることもいっぱいあるんです。だからこそ、今しんどい自分も抱きしめてあげて、でも絶対に自分が未来で笑うことに繋がってるんだっていう未来の自分を信じてあげてほしいなということを、今日視聴してくださっている方に伝えたいと思いました。
長時間にわたって東京レインボープライド2021のアカルクオンラインブースをご視聴いただき、ありがとうございました。まさに今日、みなさんに起業家として事業面でもいろんな話をしていただいたんですけど、何か特別なわけではなくて自分自身が生きづらいなと感じたことであったり、これからやっていきたいなということは、みなさんと形が違えど共通してるところはあると思いますので、これからも身近にフランクに感じていただきながらいろんな取り組みをしていけたらと思っています。