この記事は2021年4月25日(日)13時~18時に開催された東京レインボープライド2021の
アカルクオンラインブースで配信した動画を一部抜粋して記事にしたものになります。
(※最後のぶっちゃけトークは反映させていませんのでご了承下さい。)

 

矢野(司会):皆さんこんにちは。
東京レインボープライド2021、株式会社アカルクのオンラインブースへよくおいでくださいました。株式会社アカルクのキャリアカウンセラーの矢野です。よろしくお願いします。
このブースではLGBTQ+を主なテーマに、社会課題の解決に取り組んでいる若手起業家4名の方にお越しいただきまして、トークイベントを開催します。

 

 

堀川:皆さんこんにちは。株式会社アカルクの堀川です。
今回のイベントを企画しています。今回、「LGBT×社会起業家」というテーマでそもそも私たちがなぜ会社を立ち上げたのか、普段どんな事業を行っているのか、私たち自身も起業家というキャリアを選びましたが、これからさまざまな社会課題を解決していきたい、自分も将来的には起業してみたいという、そんな人たちにとっても少しでも選択肢の幅が広がるようなイベントにできればと思っています。

 

登壇者の紹介はコチラからご覧ください。(割愛します)

 

【①なぜ起業したのか】

矢野:それでは早速トークに入っていきます。まず最初のテーマは、なぜ起業したのか。
どんなことで起業にいたったのか、個人的な原体験、解決したい社会課題、あわせてなぜ非営利団体や公益団体ではなく株式会社なのか。

合田:個人的な原体験よりも、私は今株式会社TIEWAの前に所属してる会社があったんですよね。そこの一事業部が会社になったような形で、事業部の責任者をやってみて、その事業部に紹介したのは星さんなんですけど。知り合い同士で「合いそうだから」ってことから仕事が始まって紹介してもらった会社の一事業部がメディアをやったりアプリを作ったり。母体の会社は解散する流れになっちゃって。でもうちの事業部はなかなかこれからもチャレンジしていけそうかもしれないねってなって、じゃあもう会社にしましょうかと。そんな感じで始まったので。株式会社という形をとったのは必然的だった。

 

ー会社を起こしたいとは思ってた?

合田:やりたいなというよりも、この事業を終わらせたくなかったのが大きかった。やってみて楽しいから引き受けようと。

 

ー星さんは?

星:大きく理由は2つあって、1つは自分自身がNPOだったりLGBTだったりそれ以外の学生団体だったりボランティアしていたことが過去にあって、そのときに感じた一つの課題が、ボランティアって形だとどんなにそこに優秀なメンバーやパッションがあるメンバーが集まっても手弁当になってしまったり交通費は自分で払って。学生はアルバイト、社会人の方は平日働いて土日だけ参加って形になっちゃうと、社会課題の解決ってすごく複雑性が高かったりまだまだテクノロジーの手が入ってなかったりってことで、プロフェッショナルな人材が入ってこそ解決できる領域だと思ってるんですね。

そうなると、会社って形でたくさん人を雇用しながらちゃんと価値を社会に提供して正当な対価をいただいて、それによってさらに会社が大きくなれば提供できるものが増えてLGBTの方やそうでない方も含めてよりハッピーな人生が歩めると思ったので、会社という持続可能な形をえらんだ。もう一個が、ご覧になられている方って社会起業に興味がある方とか、起業までいかなくてもビジネスやライフワークにしたいと思っている、波が来ていると思ってる。

市場としては。それはSDGsだったりESG投資って形でマーケットがすごく今大きくなっているというか注目されている。私ビジネスの本質は社会課題の解決だと思ってるんですよ。あらゆるビジネス、課題を解決してるからそれに対してお客様がお金を支払ってくれる。

そのビジネスってところで、うちの会社とかだと投資家から出資をいただいてそれを元手にさらにサービスに投資をしてユーザーの方に価値を還元してるんですけど、そういった部分で今市場環境もよくなってるので、まさに今これからビジネスとして解決していく領域としてはすごくチャレンジングだし、今だからこそ解決できることたくさんあるんじゃないかなと。それで株式会社という選択をしました。

 

ー須藤さんは?

須藤:僕は起業した理由としては2つあって、1つがうちの実家は貧乏だったんですよ。
電気ガス水道全部止まるような家で育ってきたの。ごはんを食べることができなくて高校時代はコンビニでアルバイトをして、廃棄を貰える時代だったのでそれを持ち帰ってみんなのごはんを用意するような生活をしていたんです。私は宮城県出身ですが、地方で貧困となるとそこからの脱却が難しいんですよ。

父親も母親も頑張ってるのはすごくわかるんだけど、貧乏から脱却するのが難しいと感じて、なんとか自分で変えたいと思って東京に出てきた。出てきたものの、高校卒業で出てきてますから、高卒で金融業界に派遣で入ってそこからある程度実績を作って行員になった背景があるんですけど、ここでもはっきりあなたは学歴が高卒だからここまでしか出世できないよと言われてすごく悔しかった。僕は自分の人生を自分の力で変えていきたいということで、18とか19の頃から起業したいと思ってたんです。でもどうしたらいいかはわからなかったけどいろんなことを考えていて、2014年にIRISを任意団体で作ったのちに、2016年ごろに当時証券会社で働いていたときに上司にゲイだってことがばれて、翌日には部署内全体に知られているアウティングが起きてしまったんです。

そのときに会社と闘うかどうするかってときに、ここでパワーを使っても仕方ないと会社をやめてIRISを法人化させました。なぜ株式会社なのかというと、われわれがお手伝いさせていただいているのがお部屋探しで不動産事業になるんですけど、当時は不動産事業は株式会社でないと運営できないということでしたから、一企業から自分自身の経験を活かしてアップデートしていこうとIRISを続けています。昔は貧乏だったからハングリー精神が強かったんですよね。今になるとよかったなと思いますけど、当時はめちゃくちゃしんどかった。

 

ーでは堀川さん

堀川:私は実は2回目の起業になるんですけど、3つ理由があります。
1つは原体験。私自身トランスジェンダーである中でファーストキャリアは自衛官だったんです。地雷撤去をしたく入隊したのですが、トランスジェンダーであることをカミングアウトして診断書を出したところ条件付き採用になりました。中にいる間に勝手に手術したり治療したり周りが嫌がったら即解雇だよとなって。地雷撤去もジェンダーの関係で行けず。じゃあ自分の目で世界を見ようと世界中回ってたんですが、パスポートであったり宿泊施設、世界中でジェンダーのことが関係して。やっぱりこの問題とは一生向き合わないといけないんだってことで帰国して21歳のとき最初個人事業でやり始めました。
ただ当時まだ日本では、LGBTという言葉も認知されていない中で講演や研修に呼んでいただいても、ほぼボランティアのような状態だったので、いろんな仕事を掛け持ちしながら取り組んでいました。
自分自身ジェンダーの問題は人生を賭けてでも、なんとかしていきたいというのが原体験としてありましたが継続するためには、2つ目となる持続可能な形で取り組むためには社会性と経済性を伴わせた仕組みが必要だと思いました。20代前半はもがきながらいろいろやっていたんですけど、どうすれば自分もやりたいことができて、かつ人のためにもなるのか。もっと多くの人にとって喜んでもらえるんだろうかと考えた結果、まず、自分がもっと力を付ける必要があるなと思いました。

そこで、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社に入って、私が入ることでジェンダーの取り組みをもっと広い視点から対企業としてできることがあるんじゃないだろうか。組織やビジネスのことを学びながら実践に移していこうと、人事の仕事とLGBTに関する事業を立ち上げました。そうこうしている内に、時代の流れも変わり、自分にできることが増え結果として、お客様の需要が増えてきました。うちの会社でもLGBTに関する取り組みをもっとしていきたい。企業として、人事としてどうしていけばいい?という依頼がとても増えました。独立するとなるとお客様からも会社として付き合っていきたいということで、迷うことなく株式会社になりました。
なので私の場合は、原体験、持続可能性、需要の3つで株式会社にしました。

 

【②事業を通じて起こした社会変化】

ー次のテーマに移ります。
ご自身の組織が起こした小さな社会変化について。普段社会の多様性を進めていく事業を行われていますが、自社の事業を通じて感じる社会変化やエピソードがあればシェアしていただきたい。

星:まだまだ大きな変化を起こしていきたいと思いつつ、それでもこの先ずっとこの変化が起きるたびに嬉しいなとか頑張りたいなと思えるのは、一番はユーザーの方でLGBTの当事者の方が就職して、その中で長く働いて、たまに連絡来るんですよ。今生き生き働けていますとか、昇進しましたとか、会社ですごく評価されましたとか。そういうのいただくのが何よりうれしいですし、エピソードで言うとある大学卒業した後にトランスジェンダーの方で男性として生活してきたけど卒業したら女性として生きていきたいと。ただ、トランスジェンダーで女性として生きるのは正社員として働けるところは無いと思って、新宿で水商売をずっとやっていらして、20代後半のときにうちのサイトを通じて就職をすることができて、その方が言ってくださったのが、水商売が悪いとかではないんですけど「前まで選択肢が無い中、必死に毎日、次の日どうなるか分からない不安定な中だった。でも会社に入れたことで、自分の未来のことを、5年先や10年先のキャリアや人生どうしようかなと考えれるようになったんです」と言ってくれたのは、一番キタエピソードで。これをもっともっと生み出せれば、きっと今この瞬間も活躍できないなあとか自分は必要とされてないと思ってる方が活躍できれば、すごく大きなパワーになると思って。

 

ー選択肢っていうのとライフプランニングができる、この2つは大きい。

須藤:IRISのお話をする前に、JobRainbow経由でうちにジョインしてくれたスタッフが2名いるんです。

合田:うちもいる(笑)

堀川:うちは6月から(笑)

須藤:そのうちのお一方はもう半年くらい経ったんですが、もともとは男性として生活されていて今は女性として生活されるということで、前の会社ではカミングアウトをしてなくて名前の変更もできなかったんですと。治療も前職で始めたということで、見た目が徐々に変わってくることへの空気感でストレスに感じてるようだったんですが、IRISに入ってからはそんなこと気にしなくていいからといつも楽しそうに働いてくれている姿を見たり、名前を変えることができたってとても喜んでいて、その姿を見るとうれしくて「会社作ってよかった」ってすごく思った瞬間だったんです。今までは自分の素の姿を隠しながら働いていた。

僕自身会社員時代はストレートのふりをして、女の子が好きなフリをして、彼女がいるフリをしてた中でアウティングを受けて、結局これかってことがあったから、これを自分の会社で、かついろんな企業様が取り組みをしている、しかもそれが同年代ってことに喜びを感じた。うちだと、選択肢が広がったなと思います。昔、自分自身が一番最初に同棲しようと思ったのは18~19歳くらいの頃だったんですけど、自分がゲイかなって思い始めたときに初めて男性とお付き合いするってなったときになかなかお家借りることができなかった。でも、今は皆さんお家を借りることで、まだまだ借りづらい世の中だけど、今度借りるだけじゃなくて買うって選択肢も広がってきたんですよ。

昔住宅ローンは同棲カップルに無かったのでペアローンで使えるってものが、それがようやく使えるようになってきた。IRIS作って8年ようやく広がってきたな、続けてきてよかったなと思うし、どんどん広げていきながら社会にインパクトを与えていきたいなと思いました。

 

堀川:うちの場合は2つあって、1つは企業側の中に入って制度改革とかをしていくことが多いんですが、人事の方の中にも当然当事者の方もいらっしゃれば、組織の人事部は経営と現場の板挟みになってることも多く、かつ情報に関しても話せることが限られている。そんな中で、LGBTQ+に限らず障害のある方、高齢の方、外国籍の方等ダイバーシティに関する幅広い取り組みとなると、何をゴールに何からからはじめ、誰にどんな相談をしていいのかわからない。
具体的に施策に落とし込むにしてもどう進めたらいいかわからない。というときに、ダイバーシティを活かした組織作りに関する相談や取り組みを一緒に行うことで、喜ばれることが増えてきました。

ただ、個人的に一番うれしかったのは、学校の卒業式とか集まりの場に呼んでもらうことが多くて、「君の生き方おもろいからしゃべって」ってと言われることがあるのですが、今から数年前。
大阪のちょっとやんちゃな学校に呼ばれたときのことです。
先生から事前に「生徒が静かに聞けないかもしれないけどいいですか?」って言われて「いいですよ」と訪問したら、生徒さんたちが講演始まる直前もバスケットボールで遊んでいて。いざ自己紹介すると「うわーオカマや」「おなべや」「どうやって男性器つけんの」って子どもたちも 素朴な疑問で飛んできて、私もこんな性格なんでスライド使って話すのはやめて子どもたちからの質問に全部回答してたんですね。
そして、終わった後校長室で休ませてもらっているとノック音がして扉を開けると、さっきの子どもたちがずらっと並んでて内心ドキドキしたいたら、代表格の子がやってきて目の前で「さっきの話よかったで!」ってキメポーズして帰っていったんですね。(笑)

一同:(笑)

堀川:内心なんじゃそりゃ!と思ったのですがそのときに、ハッとしました。
自分はLGBTQ+のこと知ってもらいたいとか、同じように悩んでる人の力になりたいと思ってやってたんですけど、きっとその子どもたちからするとLGBTQ+っていうよりも、社会からレッテルを貼られてる、人に言えない悩みがある、何か違うマイノリティであることと性という切り口を通じて「自分らしくいていいんやぞ」って伝えられるメッセージがあるのかなと思ったときに、これが自分の仕事のやる意味であって、社会というよりは目の前の人に+になることが少しでもあったのかなと思いました。

 

合田:当事者向けにやっていかないといけないことたくさんあるし課題だらけなんですけど、一方で自分には関係無いかなと思ってる人向けに私たちはメディア発信をしているんですね。自分も何かどこかでマイノリティなところがあるかもとか、自分らしく生きられないつらさがあるけどつらいって言ったら自分の立場とか、根本的な生きづらさってどこかでみんなわかりあって実は連帯できるところもあるよねってことをメディアで伝えたかった。なので漫画っていう流れてきたらついつい見てしまう形で発信を続けていて、うれしかったのは関係無いと思ってたけど私やっぱりジェンダーのこと勉強することにしましたって言ってくれた方や、「私は今日からアライを名乗ります」とTwitterのbioにアライとを書き始める人とか、当事者ではないと思っていたけど自分とまったく関係無いことじゃないんだなって気付けた人のエピソードがうれしくて。漫画のエピソード募集してるときにドラマチックなエピソードが来たり。

たとえばトランスジェンダーの生徒さんがいる担任の先生から、トランスジェンダーの方の制服を、本当に着たい制服を取り戻す漫画を読んでもらって、その人も喜んでくれたし全然関係無い方も「うちの学校でも起きてるかも」って気付いて。気付いてなかったけどそういうこともあるのかって一つ気付きを得てくれる瞬間がメディアやってるとたくさん触れることができるので。

あと変化としては単純な漫画がバズらなくなってきたんですよ。2~3年前は、たとえば「LGBTの人って10人に1人いるかもしれないんだって」で結構読まれてました大バズ。知らなかった!って感じだけど。今はもうみんな知ってる。その先をみんな求めてる。LGBTQ+はまわりにいるし、自分に関係無いことではないとくないことはわかってきたけど一緒にどうやって生きていくの?とか視点が変わってる。

 

星:うちのサイトもアライの方が使ってくれることが多くて、「なんで使ってくださったんですか?」って聞くとPalleteトークを見て、とか。当事者ももちろん変わってきたりオープンにする人増えてきたけど、関係あると感じる人が増えてきてる。

 

 

 

 

 

(後半に続きます)