美容産業の未来を SDGsの観点から拓く

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取り組みの背景

堀川:SDGsの取り組みを行うことになった背景を教えていただけますか?

山本:もともと弊社では製品面で先に環境配慮への取り組みが進んではいましたが、それを何故やるかというSDGs方針がまだなく、これから進めていくにあたっての指針が必要だと考えたからです。
SDGsの認知が広がりだした2020年後半ごろ、私から社長に方針の必要性を提案をさせていただき、プロジェクトがスタートしました。
2021年7月から12月まで方針の作成にあたり、2022年1月に全社員に発信を行い、その約2ヶ月後にHPで社外に向けて発信を行いました。

篠原:社長もSDGsについて推進していきたいという気持ちは強くあるため、2021年の台湾発ゼロカーボンビューティーブランドO’right(オーライト)との資本業務提携をきっかけに全社で推進していこうという流れになりました。

堀川:山本さんの提案から始まったのですね。
SDGsの取り組みをされていた中で、LGBTQ+の取り組みはどのような背景やキッカケからはじまったのですか?

山本:そうですね。
LGBTQ+に関しては、当時法制化の必要性や先進国の中で日本は整備が進んでいないということをニュースで見聞きし、自分の中で気になっていました。
LGBTQ+の施策を考えつつも、まだ具体的に動いてないタイミングで、弊社の取引先の方から「LGBTQ+の研修はできますか?」というオファーが来ました。
そこで弊社のSDGsの取り組みを支援する会社の方から堀川さんをご紹介いただいたということが始まりになります。

堀川:それでお声をかけてくださったのですね!ありがとうございます。
LGBTQ+に関する取り組みを提案された際、社内で反対の声はありましたか?

山本:逆に「ニュースなどでは見聞きしていたLGBTQ+について、しっかりと学べる機会を会社が用意してくれる事は有難い」という社員の声が非常に多かったです。

堀川:なるほど。社内からそのような声があがることはとても尊いですね。
風土としても社員の声を聞きながら普段も様々な施策を推進されているのですか?

山本:そうですね。提案に関しては非常に前向きに捉えてもらえる会社だと思います。

 

LGBTQ+ の取り組み

堀川:これまでLGBTQ+に関する取り組みはどのようなことをされたのでしょうか?

山本:最初は「知る」ということで美容室向けに堀川さんに研修をやっていただきました。
私も参加させていただいたのですがとても内容が良く、ぜひ社員にも伝えてほしいと思い、全社員に向けて研修を行いました。
その後、研修で行ったアンケートをもとに2023年2月にLGBTQ+専門の社外相談窓口を設置しました。
専門の窓口があるということは心理的な安全性や安心感に繋がっていると思います。

篠原:次にアカルクさんにご支援いただいたのは人事制度の整備です。
他の進んでいる企業はLGBTQ+に対応する制度や福利厚生が整備されているので、弊社も確実に整備したいと考えていました。
また、堀川さんからLGBTQ+の方の割合は約11人に1人と聞き、弊社の場合は社員が140人ほどなので企業規模的にも人事制度を整えていかなければいけないと思うようになりました。
その後2、3ヵ月かけてご協力いただき、同性パートナーシップ制度などの社内制度が整いました。

堀川:研修や社外相談窓口の設置、人事制度の整備によって感じられた効果はありますか?

山本:直接的な効果はまだありませんが、会社としてビジネスに直結する取り組みだけでなく、社会課題に対しても取り組んでいるというのは社員にとってもプラスの印象になっていると思います。

篠原:実際に、堀川さんに研修をやっていただく際、もしかしたら社員から「質問やコメントなどあまり挙がってこないのでは?」と心配していましたが、積極的な姿勢が見られ、受講後のアンケートでも、研修に対する受け取り方というのは非常に前向きだったと感じています。
それぞれがちゃんと学んだり、勉強したかったということがすごく伝わってきました。

 

自身を突き動かすモチベーションとは

堀川:お話を伺っていると会社全体で能動的に取り組んでいる印象を受けたのですが、そのモチベーションはどこからきているのでしょうか?

篠原:社会の役に立つ仕事をしたいという思いからです。
美容の仕事だけでも役には立てると思いますが、単純に美容や利益について関わるだけだと社会環境的には良くないことに繋がってしまう可能性があります。
SDGsとビジネスを繋げながら社会の役に立ちたい、地球環境を壊さないようにしたい、自分たちの力で持続可能な社会にしていきたいという思いがモチベーションにつながっていると思います。
社員も同じように、プライドを持って仕事に取り組んでいるのではないかと思います。

山本:元々は個人的にもSDGs には興味関心を持っていました。
そして災害が多発する今、自分の子どもの30年、50年後がどうなるのかな? と考えることは弊社としてSDGs を推進するモチベーションにつながっていると思います。
また、今は学校でもSDGsの教育がされているので、子どもから見た際に、親が働いている会社も取り組みをしているのか見られているのではないかとも思っています。

アカルクを選んだ理由

堀川:お二人の原動力がすごく伝わってきました。そんな中で、なぜアカルクを取り組むパートナーとして選んでいただいたのでしょうか?

山本:実際研修で自分が見て聞いて感じて、直感的にいいと思ったからです。
また、堀川さんがLGBTQ+の当事者として自分の体験や今の仕事の背景など、聞いてる側として響く内容でしたので、アカルクさんしかないと思いました。

堀川:御社の中でパートナー企業を選ぶ際に何か決めている軸はありますか?

山本:自分で見て聞いて、会社の社風や社員の雰囲気に合うかどうかを総合的に考えます。
弊社が美容メーカーということもあり、かっちりとした講義のような進行は合わないと思っておりますし、明るいイメージの方がうちにマッチすると考えております。

 

穏やかな社内風土

堀川:「見て聞いて、自分で体感する」ことを大事にするというのは何事においてもすごく重要なことだと思います。
その考えというのは会社の風土が関係しているのでしょうか?

山本:そうですね。期初には全社員が集まる総会があり、そこで社長が社員に話をする機会があります。
その影響があるかもしれません。また社風というと、私は新卒で入社してから25年b-exにいますが、穏やかな人が多いと感じています。

取り組みの先に目指すもの

堀川:この先に目指していきたいことはありますか?

山本:今期は弊社グループの人権方針を作りたいと思っています。
また、D&I検定も全社員に受けていただく予定です。

堀川:長期的に目指したいことはありますか?

山本:三つあります。一つ目はビジネスだけでなく、SDGs やLGBTQ+の取り組みを見て弊社に入ってきてくれる方がいれば嬉しいと思っています。
実際、新卒採用をしている中で、プロダクトや美容の話だけでなく、SDGsやLGBTQ+の取り組みを見てきたという声もあります。
今後これらの取り組みで知名度が上がり、興味を持っていただけるようにもしていきたいです。

二つ目はサステナビリティの取り組みが進んでいるO’right の商品を販売する者としてプライドを持ち、SDGsやLGBTQ+に取り組んでいきたいと思っています。

三つ目は業界のジェンダー平等を後押しできる企業になりたいと考えています。
美容業界は他の業界よりは比較的LGBTQ+の割合が高い業界だと思いますし、女性の割合も高いので、ジェンダー平等は業界にとって重要です。
弊社はメーカーとしての仕事だけでなく、業界のジェンダー平等を後押しできる企業になりたいと考えています。

堀川:最後に御社の場合、社員の皆さんもそうですが、社長のSDGsやLGBTQ+推進に対する気持ちも強かったように思います。
社長の賛同を得られなかったり、社内で反発の声があったりして、なかなか取り組みを始められない担当者の方へメッセージをお願いします。

山本:最初のスタートでの巻き込みが大事かなと思っています。
会社なので、トップにちゃんと伝えることは大前提だと思います。
それがあった上で、一緒に進めていくメンバー構成はとても大事だと思います。
会社の機能を動かせる責任者クラスは間違いないですが、これから未来を作っていく若手も必要に感じます。
パワーのある若手に責任者がつくことで受動的ではなく、能動的に責任を持ってプロジェクトとして推進できると思っております。

 

対談者紹介

 

山本 良
1998 年に新卒で株式会社b-ex 入社。営業を経て、現在は内部監査・SDGs 推進担当の執行役員

 

篠原 麻理子
2000年に新卒で株式会社b-ex入社。研究、営業、マーケティングを経て、現在はコーポレート担当の取締役

 

堀川 歩
株式会社アカルク代表取締役
LGBTQ+をはじめとする多様な人が働きやすい職場環境作りを行っている。

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