近年、企業のダイバーシティ推進やLGBTQ+への理解促進が進むなかで、「アライ(Ally)」という言葉を耳にする機会が増えています。
アライとは、LGBTQ+当事者を理解し、支援する人のこと。近年、職場や学校、地域社会などさまざまな場面で重要な役割を果たしています。
ただし、その一方で「アライとは具体的に何をする人なの?」「自分もアライになれるの?」と疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、アライの意味や重要性、LGBTQ+支援でできること、実際にアライの取り組みを進めている企業事例などをまとめています。
LGBTQ+におけるアライとは
アライ(Ally)とは、日本語で「味方」や「支援者」を意味する言葉。LGBTQ+の文脈では、性的指向や性自認に関する多様性を理解し、LGBTQ+当事者を支援する人を指します。
なお、アライはLGBTQ+当事者ではない人だけを指すわけではなく、当事者自身がアライとしてほかの当事者やコミュニティを支援するケースもあります。
例えば
- LGBTQ+に関する正しい知識を学ぶ
- 当事者の声や体験談に耳を傾ける
- 性別を決めつける表現を避ける
- 職場でLGBTQ+への理解を広める
- 差別的な発言に対して問題提起をする
これらも、アライの行動の1つ。誰もが安心して過ごせる環境づくりに取り組みます。
アライには誰でもなれる
誰もが安心して暮らせる社会を実現するためには、当事者だけでなく周囲の理解と協力が欠かせません。そのため、性的指向や性自認に関係なく、誰でもアライになることができます。
アライは当事者の経験を完全に理解できるわけではありませんが、理解しようと努め、ともに行動することが求められます。
✓特別な資格や知識が必要なわけではなく、「多様性を尊重したい」「差別や偏見をなくしたい」という気持ちがアライの第一歩
アライが重要な理由
アライが重要な理由として、大きく以下の3つが挙げられます。
- LGBTQ+当事者が抱える課題の解決
- 安心して働き・生活できる環境づくり
- 多様性を尊重する社会の実現
LGBTQ+当事者が抱える課題の解決
近年はLGBTQ+への理解が進みつつありますが、依然として多くの当事者が生きづらさを感じています。
例えば、学校や職場で差別的な発言を受けたり、自身の性的指向や性自認を周囲に打ち明けられなかったりするケースも少なくありません。
また、偏見や誤解を恐れて、本来の自分を隠しながら生活している人も多くいます。
こうした課題を解決するためには、当事者だけでなく、周囲の理解者や支援者の存在、つまりアライが必要となります。
アライの可視化による心理的安全性の向上
LGBTQ+当事者は、必ずしも自身の性的指向や性自認を周囲に伝えているとは限りません。そのため、アライであることが可視化されることで、カミングアウトをする・しないにかかわらず、安心して過ごせる環境づくりにつながります。
例えば、レインボーステッカーやアライバッジを掲示したり、日頃から多様性を尊重する発言や行動を心がけたりすることで、「この人なら安心して相談できる」というメッセージになります。
また、「困ったときは相談してもよい」と感じるきっかけとなり、心理的安全性を高める効果も期待できます。
多様性を尊重する社会の実現
アライの存在は、LGBTQ+当事者だけでなく、誰もが安心して暮らし、働ける社会づくりにもつながります。
一人ひとりの違いを尊重する姿勢が広がることで、性別や年齢、国籍、障害の有無などに関わらず、多様な人が自分らしく過ごせる環境が育まれます。アライの取り組みは、多様性を尊重する文化を広げるうえでも重要な役割を果たしています。
アライになるためにできること
誰でもアライになることはできますが、なり方がわからないという方は少なくありません。
アライになるためにできることとして、主に以下の6つが挙げられます。
- LGBTQ+について正しく学ぶ
- 差別的な言動を見過ごさない
- 性的指向や性自認を勝手に決めつけない
- カミングアウトを強要しない
- 当事者の声に耳を傾ける
- アライであることを行動や意思表示で伝える
LGBTQ+について正しく学ぶ
アライになるためには、まずLGBTQ+について正しい知識を身につけることが大切です。
- インターネット
- 書籍
- 研修
これらを通じて、性的指向や性自認に関する基本的な知識を学びましょう。
誤った情報や思い込みを減らすことで、より適切な理解と支援につながります。
差別的な言動を見過ごさない
職場や学校などで差別的な発言やからかいを見聞きした際には、それを当然のものとして受け流さないことも重要です。
無理に対立する必要はありませんが、「その言い方は適切ではないかもしれません」と伝えるだけでも、周囲の意識を変えるきっかけになります。
性的指向や性自認を勝手に決めつけない
- 「男性だから女性が好きだろう」
- 「見た目が女性らしいから女性だろう」
これらの思い込みは、無意識の偏見につながることがあります。
相手の性的指向や性自認を決めつけず、一人ひとりを尊重する姿勢を持つことが大切です。
カミングアウトを強要しない
LGBTQ+当事者が自身のことを打ち明けるかどうかは、本人が決めるべき問題です。
興味本位で聞き出したり、無理にカミングアウトを促したりすることは避けましょう。本人が安心して話せる環境を整えることが重要です。
当事者の声に耳を傾ける
アライとして活動する際は、自分の考えだけで判断するのではなく、当事者の経験や意見を尊重することが大切です。
当事者が何に困り、どのような支援を求めているのかを知ることで、より適切な行動につながります。
アライであることを行動や意思表示で伝える
アライとしての思いは、周囲に伝わる形で示すことも大切です。
例えば、メールの署名に使用する名前や代名詞(Pronouns)を記載したり、LGBTQ+に関するイベントや研修へ積極的に参加したりすることも、アライとしての意思表示につながります。
こうした行動は、「多様性を尊重する人が身近にいる」という安心感につながります。大きな活動を始める必要はなく、自分にできる方法で支援の意思を示すことが、アライとしての第一歩です。
企業におけるアライの取り組み
昨今は多くの企業で、アライに関する取り組みを実施しています。代表的な取り組みの例として、以下が挙げられます。
- アライ研修の実施
- アライステッカーやバッジ、アライグッズの活用
- アライコミュニティの運営
- 相談しやすい環境づくり
アライ研修の実施
多くの企業では、LGBTQ+への理解を深めるための研修を実施しています。
基礎知識や適切な対応方法を学ぶことで、従業員一人ひとりがアライとして行動しやすくなります。
アライステッカーやバッジ、アライグッズの活用
アライであることを示すステッカーやレインボーバッジを活用する企業も増えています。
相談先が見つけやすくなり、当事者が安心して声をかけられる環境づくりにつながります。
アライコミュニティの運営
LGBTQ+当事者やアライが交流できる社内コミュニティを設置する企業もあります。
情報共有や意見交換の場を設けることで、組織全体の理解促進につながります。
相談しやすい環境づくり
相談窓口の設置や制度整備も重要な取り組みです。
安心して相談できる環境があることで、当事者が抱える不安や悩みを軽減しやすくなります。
アライ活動に取り組む3つの企業事例
ここでは、アライを活用してより良い職場づくりに励む企業の事例を3つ紹介します。
- IBM
- KDDI
- パナソニック コネクト
IBD
IBMは、世界的にLGBTQ+支援やダイバーシティ推進に積極的に取り組んできた企業として知られています。
例えば日本IBMでは、LGBTQ+当事者とアライによる社内コミュニティを運営。「誰もが誰かのアライになれる」をメッセージに、学習会や情報発信、社内イベントなどを実施しています。
また、2016年には同性パートナーを配偶者と同等に扱う「IBMパートナー登録制度」を導入しました。
さらに、毎年6月のプライド月間には、LGBTQ+当事者やアライ、人事担当者、経営層が連携しながら理解促進イベントを開催するなど、誰もが自分らしく働ける職場づくりを進めています。
参考:IBM「日本IBMの個性を活かす取り組みとは?」
参考:東京レインボープライド2023「日本アイ・ビー・エム株式会社」
KDDI
KDDIは、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりを目指し、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)推進に取り組んでいる会社です。
LGBTQ+に関する社内研修や啓発活動を実施するとともに、社員同士がつながるコミュニティの運営や相談しやすい環境整備を進めています。
また、性的指向や性自認にかかわらず働きやすい制度づくりにも力を入れており、社員一人ひとりが自分らしく活躍できる企業文化の醸成を目指しています。
2020年10月にアライコミュニティを発足し、アライの存在を増やすことで、LGBTQ+当事者だけでなく、すべての従業員が安心して働ける職場づくりを進めている点が特徴です。
参考:KDDI「DE&I(ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン)」
パナソニック コネクト
パナソニック コネクトは「PRIDE Action 30」を掲げ、アライコミュニティ活動を積極的に展開しています。「Pride Action30」は、プライドハウス東京と同社がともに立ち上げた取り組みで、賛同企業の協力に支えられています。
誰もが安心して働ける環境づくりを目指し、以下のような「今すぐできるアクション」を30個集め、発信しています。
- 恋人や配偶者を「パートナー」と呼んでみる
- 「男らしい・女らしい」という言葉を使わないようにしてみる
- 戸籍の性別を変えるための要件を調べてみる
このプロジェクトは、少数派の権利が守られていない状況を人権問題として捉え、多様性を尊重する企業こそが変化の激しい環境でイノベーションとレジリエンスを持続できる、という想いから始まりました。
参考:パナソニック コネクト「Pride Action30 できることから始めよう。」
アライに関するよくある質問
Q. アライはLGBTQ+当事者でなければなれませんか?
いいえ。当事者でなくてもアライになれます。LGBTQ+について理解し、支援したいという意思があれば、誰でもアライになることができます。
Q. アライを名乗るには何か条件がありますか?
特別な資格や認定制度はありません。LGBTQ+について学び、多様性を尊重する行動を実践することがアライへの第一歩です。
アライの輪を広げることが、誰もが働きやすい職場づくりにつながる
アライは特別な資格は不要で、誰でもなることができます。正しい知識を学び、差別や偏見を見過ごさず、当事者の声に耳を傾けることがアライとしての第一歩です。
また、アライの存在は個人だけでなく、企業にとっても重要です。アライが増えることで、LGBTQ+当事者を含むすべての従業員が安心して働ける環境づくりにつながります。
一方で、「何から始めればよいかわからない」「社内の理解促進を進めたいが方法がわからない」と悩む企業も少なくありません。
アカルクでは、企業のアライコミュニティづくりを支援する資料をご用意しています。立ち上げの進め方やコミュニティガイドラインの策定方法、他社事例などをまとめていますので、社内でアライの輪を広げたいとお考えの方は、ぜひご活用ください。




