近年、企業内でLGBTQ+への理解促進が進む一方で、職場における差別的な言動や配慮不足による「LGBTQ+へのハラスメント」が問題視されています。
本人の了承なく性的指向や性自認を暴露する「アウティング」や、何気ない冗談・決めつけの発言が、当事者に大きな精神的負担を与えるケースも少なくありません。
こうしたハラスメントは、従業員の離職や職場環境の悪化、企業イメージの低下につながる可能性もあるため、早めの対処が必要です。
そこで本記事では、LGBTQ+へのハラスメントの具体例のほか、LGBTハラスメントが企業にもたらすリスクなどを詳しく解説。企業が取り組みたい防止策もまとめているので、最後までご覧ください。
LGBTQ+へのハラスメントとは
LGBTQ+へのハラスメントとは、性的指向(どの性別を好きになるか)や性自認(自分の性別をどう認識しているか)に関して、相手を傷つけたり、不快にさせたりする言動・扱いのこと。
「LGBTQ+だから」と明確に差別する行為だけでなく、以下のような言動も、ハラスメントに該当する可能性があります。
- 本人の了承なく性自認や性的指向を他人に話す(アウティング)
- 「彼氏いるの?」「男なの?女なの?」といった詮索をする
- 性的指向や性自認を冗談でからかう
本人に悪気がなかったとしても、相手に精神的苦痛を与えたり、安心して働けない環境をつくったりしてしまうケースは少なくありません。
そのため近年では、企業にもハラスメント防止や、適切な配慮が求められてきています。
LGBTQ+へのハラスメントと「SOGIハラ」の違い
「SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)ハラスメント=LGBTQ+へのハラスメント」と捉える人もいますが、実際は以下のような違いがあります。
■LGBTQ+へのハラスメント
レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなど、LGBTQ+当事者に対する差別的言動や不適切な扱いを指す。
■SOGIハラ
「性的指向」と「性自認」に関するハラスメント全般を意味する。つまり、LGBTQ+当事者だけではなく、すべての人が対象となる概念。
たとえば以下のような発言は、本人の性的指向や性自認、ジェンダー観に基づいて精神的苦痛を与える場合、SOGIハラに該当する可能性が高いです。
- 「男なんだからもっと男らしくしなよ」
- 「結婚しないの?」
- 「女性なのにその格好は変じゃない?」
近年は、企業や行政でもLGBTQ+対応だけでなく、より包括的な考え方として「SOGI」の視点が重視されるようになってきています。
特定の属性だけに配慮するのではなく、「誰もが安心して働ける環境づくり」が求められているのです。
LGBTQ+へのハラスメントの具体例
SOGIハラの具体例には、たとえば以下のような発言が挙げられます。
- 「もう30歳なのに結婚しないの?」
- 「男性なんだから一家の大黒柱にならないと」
- 「女性なんだからお茶出しをお願いね」
これらは、LGBTQ+当事者に限らず、性的指向や性自認、ジェンダー観に関する固定観念によって相手を傷つける可能性がある点が特徴です。
一方、SOGIハラに限らず、以下のようなLGBTQ+当事者に限った差別的な言動や不適切な扱いが問題になることも多いです。
- 本人の了承なく性的指向や性自認を暴露する(アウティング)
- からかいや冗談の対象にする
- トイレ・服装・呼称に配慮しない
- 昇進・採用などで不利益な扱いをする
本人の了承なく性的指向や性自認を暴露する(アウティング)
アウティングとは、本人の許可なく、性的指向や性自認に関する情報を第三者へ伝える行為のこと。
たとえば、「実はあの人、同性が好きらしいよ」「元は男性(女性)なんだって」など、本人が限られた人にだけ話していた内容を、社内で共有するといった行為が該当します。
性的指向や性自認は、非常にセンシティブな個人情報です。本人の意思に反して暴露されることで、精神的苦痛や人間関係の悪化、離職につながるケースもあります。
からかいや冗談の対象にする
LGBTQ+に関する発言を、冗談やからかいとして扱うこともハラスメントに該当する可能性があります。たとえば、「男らしくない」「女性なのに変わってるね」といった発言です。
発言した本人に悪気がなくても、相手を傷つけたり、職場で安心して過ごせない原因になったりすることがあります。
また、周囲が笑って受け流す環境そのものが、当事者を孤立させてしまう場合もあります。
トイレ・服装・呼称に配慮しない
以下のような性自認に関する配慮不足も、ハラスメントにつながることがあります。
- 本人の希望に反して戸籍上の性別で呼ぶ
- 通称名の使用を認めない
- 性別によって服装を固定する
- トランスジェンダー当事者が使いやすいトイレ環境を整備していない
すべてを一度に整備することは難しい場合もありますが、本人の意思を尊重しながら、できる範囲で配慮を行う姿勢が重要です。
昇進・採用などで不利益な扱いをする
性的指向や性自認を理由に、以下のような採用・配置・昇進などで不利益な扱いをすることも問題です。
- LGBTQ+当事者であることを理由に採用を見送る
- 「周囲が戸惑うから」と接客業務から外す
- 管理職への昇進を避ける
- 結婚制度や福利厚生の対象から除外する
こうした対応は、本人の能力や適性ではなく属性によって判断している状態であり、公平な職場環境とはいえません。
企業には、多様な人材が安心して働ける環境づくりが求められています。
LGBTQ+含めハラスメントが企業にもたらすリスク
LGBTQ+の方に限らず、ハラスメントは当事者個人を傷つけるだけでなく、企業全体にもさまざまな悪影響を及ぼします。
ここでは、企業が理解しておきたい4つのリスクを解説します。
- 従業員の離職やメンタル不調
- 職場の心理的安全性低下
- SNS炎上や企業イメージ悪化
- 法的トラブルにつながる可能性
従業員の離職やメンタル不調
LGBTQ+やSOGIに関するハラスメントは、以下のように当事者に強いストレスや孤独感を与えるケースがあります。
- 自分らしく振る舞えない
- 周囲の目が気になって相談できない
- 職場に居場所がないと感じる
このような状態が続くことで、メンタル不調や休職、離職につながる可能性があります。
また、当事者本人だけでなく、ハラスメントを見聞きした周囲の従業員にも不安や不信感を与えます。結果として、組織全体のエンゲージメント低下につながることもあります。
職場の心理的安全性低下
LGBTQ+などへのハラスメントが放置されている職場では、「何を言われるかわからない」「相談しても理解されない」と感じる従業員が増えやすくなります。
こうした環境では、意見を言いにくくなる、コミュニケーションが減る、チームワークが低下するなど、組織全体の生産性にも悪影響が及ぶ可能性があります。
近年は、多様な人材が安心して働ける「心理的安全性」の高い職場づくりが重視されています。LGBTQ+ハラスメント対策は、その土台となる重要な取り組みの一つです。
SNS炎上や企業イメージ悪化
近年は、職場での差別的言動や不適切な対応がSNSなどを通じて拡散されるケースも少なくありません。
以下のような問題が表面化すると、企業イメージの低下につながる可能性があります。
- 従業員による差別発言
- 不適切な採用対応
- アウティング問題
企業の姿勢は、求職者や取引先、消費者からも見られています。「多様性を尊重していない企業」という印象を持たれれば、採用活動やブランド価値にも影響を及ぼしかねません。
法的トラブルにつながる可能性
ハラスメントは、場合によっては法的トラブルに発展する可能性もあります。
たとえば、LGBTQ+関連でいえば、アウティングによって精神的苦痛を与えたケースでは、過去に裁判へ発展した事例もあります。
また、企業には職場環境への配慮義務が求められるため、ハラスメントへの対応不足が問題視される可能性も高いです。
近年は、自治体の条例整備や企業への社会的要請も進んでおり、LGBTQ+への配慮は「あると望ましい取り組み」ではなく、重要な組織課題の一つとして認識されるようになっています。
企業が取り組みたいLGBTQ+へのハラスメント対策
LGBTQ+へのハラスメントを防ぐためには、従業員一人ひとりの意識だけではなく、企業として環境整備を進めることが重要です。
ここでは、企業が取り組みたい主な対策として、以下の5つを紹介します。
- ハラスメント防止方針を明確化する
- 相談窓口を整備する
- 管理職向け研修を実施する
- アウティング防止を徹底する
- 制度・設備面を見直す
ハラスメント防止方針を明確化する
まず重要なのが、企業として「LGBTQ+はもちろんのこと、すべてのハラスメントを許容しない」という姿勢を明確に示すことです。
就業規則やハラスメント防止方針の中に、以下のような内容を盛り込むことで、従業員全体に企業の方針を共有しやすくなります。
- 性的指向・性自認に関する差別を禁止する
- アウティングを認めない
- 多様性を尊重する
また、方針を作るだけではなく、社内周知まで行うことが重要です。
相談窓口を整備する
ハラスメントに悩んでいても、「相談しづらい」と感じる当事者は少なくありません。そのため、以下のように安心して相談できる体制を整備することが大切です。
- 匿名でも相談できる仕組みをつくる
- 外部相談窓口を活用する
- 担当者に適切な知識を身につけてもらう
相談窓口が機能していない場合、問題が表面化せず、深刻化してしまう可能性もあります。
管理職向け研修を実施する
管理職が無意識の偏見を持っていたり、適切な対応方法を知らなかったりすると、ハラスメントの見逃しや不適切対応につながる可能性があります。
そのため、管理職に対して以下のような研修を実施することも大切です。
- LGBTQ+の基礎知識
- SOGIハラの具体例
- アウティングのリスク
- 適切な声かけや対応方法
管理職だけでなく、全従業員向けに理解促進を行うことも効果的です。
アウティング防止を徹底する
性的指向や性自認に関する情報は、非常にセンシティブな個人情報です。
本人から打ち明けられた内容を、上司へ共有する、同僚に話す、雑談の中で広めるといった行為は、アウティングに該当する可能性があります。
たとえ善意だったとしても、本人の意思を無視して情報共有を行うことは避けなければなりません。
企業としても、「本人の許可なく共有しない」というルールを周知し、個人情報として慎重に扱う意識を浸透させることが重要です。
制度・設備面を見直す
LGBTQ+に関していえば、当事者が安心して働くためには、制度や設備面の見直しも重要です。たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。
- 通称名を使用できるようにする
- 誰でも使いやすいトイレ環境を整備する
- パートナーシップ制度利用者も福利厚生の対象に含める
すべてを一度に整備する必要はありませんが、「困りごとに耳を傾け、改善していく姿勢」を持つことが大切です。
制度や環境の見直しは、誰もが働きやすい職場づくりにもつながります。
ハラスメント対策は働きやすい職場づくりにつながる
LGBTQ+含め、あらゆるハラスメントを防ぐためには、一時的な研修や個人の意識改革だけではなく、企業として継続的に環境を整備していくことが重要です。
特に、対応ルールが曖昧なままでは、現場ごとに判断が分かれ、従業員が不安を感じる原因にもなりかねません。
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