LGBTQ+をめぐって、さまざまな動きが見られた2025年。特に同性婚訴訟における司法判断の相次ぐ動き(全国5つの高裁で違憲または違憲状態と判断) は、社会へ大きなインパクトを与えました。
また、LGBT理解増進法を前提とした企業対応の広がりや、採用・人材定着面でのDEI重視など、企業において制度整備を進める必要性も高まってきています。
そこで本記事では、2025年の出来事を振り返るとともに、2026年に企業で求められるLGBTQ+対応のポイントを整理しました。
誰もが働きやすい職場環境を実現し、企業としての姿勢を伝えていくためにも、ぜひ参考にしてみてください。
企業にとって「鍵」となるLGBTQ+2025年の出来事
2026年に企業が求められるLGBTQ+対応を知るためには、その前に「2025年に何が起こったか」、そしてそれが「企業にどのような影響を与えるのか」を知る必要があります。
2025年に起こった大きな出来事として、以下が挙げられます。
- LGBTQ理解増進法を前提とした「企業対応の広がり」
- 同性婚訴訟における高裁の相次ぐ「違憲判断」
- 企業評価と現場の実態とのギャップ
LGBT理解増進法を前提とした「企業対応の広がり」
2023年に成立したLGBT理解増進法を受け、2024年、そして2025年は多くの企業が具体的な対応を進めることになった年でもあります。
<2025年に企業が向き合った対応策の例>
- 社内ルールや行動指針を見直し、就業規則にLGBTQ+に関する記載を追加
- 管理職を中心に、対応の考え方を共有する研修を実施
- 通称名使用や相談対応など、日常業務での配慮を整備 など
ただ、「何も対策していない状態」から一歩進んだ企業も増えた一方、対応内容や浸透度にはまだ企業間で差が見られるのが現状です。
同性婚訴訟における高裁の相次ぐ「違憲判断」
2025年は、各地で続いてきた同性婚訴訟について、高裁での判断が相次いだ年でもあります。
違憲または違憲状態という判決から、「同性カップルが法的に保護されていない現状」や「制度と社会の意識のずれ」が、改めて注目される結果となりました。
企業評価と現場の実態とのギャップ
2025年は、DEIに関する大きな制度変更こそなかったものの、日本の企業・職場レベルで具体的な動きが見られた年でもあります。
例えばLGBTQ+の職場づくりを評価する「PRIDE指標2025」では900社を超える企業が認定を受け、職場環境改善への取り組みが広がっています。
ただし、企業側の取り組みが可視化された一方、LGBTQ+労働者の約34%が職場で差別を経験しているという調査結果も見逃せません。
出典:PR TIMES「全国のDEIを推進する企業920社超が認定。LGBTQ+の職場環境の取組指標「PRIDE指標2025」を発表。「work with Pride 2025 カンファレンス」開催」
出典:randstad「日本のLGBTQI+労働者の34%が直面する職場での差別をなくすために 「オランダ企業と考える LGBTQ+インクルージョン研修」ウェビナー開催」
LGBTQ+2025年の出来事から見える課題
上述の2025年に起きた出来事などから、日本の企業におけるLGBTQ対応が一定程度「可視化」された年だったことがわかります。
一方、その過程で以下のような課題やギャップも明らかになってきています。
- 「制度」と「運用」の間にある差
- 「法制度」と「職場実態」のずれ
- 「企業の姿勢」と「当事者の体験」との乖離
「制度」と「運用」の間にある差
課題の1つ目は、社内に制度があっても、現場での運用が追いついていない点です。
2025年には、LGBTQ+研修の実施、通称名の使用許可、相談窓口の整備など、多くの企業で制度の定着が進みました。
しかし実際には、以下のようなケースも少なくありません。
- 制度があっても現場で十分に使われていない
- 管理職や担当者ごとに対応が異なる
- 当事者が「利用しにくい」と感じている
「制度はあるが、実際の職場でどう機能しているか」は企業によって大きく異なります。
「法制度」と「職場実態」のずれ
2つ目の課題は、法律と企業実務の間に明確な基準がない点です。
現行制度では同性婚が認められていない一方、企業や職場では、配偶者に準じた福利厚生の扱いや、慶弔・転勤・休暇など、家族としての配慮を求められる場面が増えています。
こうした中で企業にとっての課題は、「法的な基準が明確でないまま、現場で判断や説明を求められている点」にあります。
このような状況下では、「法律にないことを企業としてどこまで対応すべきか分からない」と感じている企業も少なくありません。
「企業の姿勢」と「当事者の体験」との乖離
3つ目の課題は、企業が進めている取り組みと、当事者が実際に職場で感じている体験との間にずれがある点です。
PRIDE指標などを通じて、企業のLGBTQ+対応が評価・可視化される流れが進んだ一方、LGBTQ+労働者の約34%が職場で差別を経験しているという調査結果も示されました。
このことから、「企業が掲げる方針やメッセージ」と「実際に職場で働く当事者の体験」の間に、必ずしも一致しない部分があることがうかがえます。
制度や取り組みが存在していても、それが当事者にとって「安心して働ける環境」として感じられているかどうかは別問題です。
2026年に企業で求められるLGBTQ+対応
2025年の出来事や、見えてきた課題を通して、企業は今後何に取り組むべきなのか。
ここでは、2026年に企業で求められるLGBTQ+対応を考えていきます。
制度やルールの有無にかかわらず、職場の現状を確認する
まず大切なのが、企業としてLGBTQ+対応できる体制が整っているかどうかを確認することです。
すでに制度を整えてきた企業では、それらが現場で本当に機能している/できるかを確認する必要があります。
一方、制度をまだ設けていない企業では、LGBTQ+に関する相談や配慮が必要になった場合に、現場がどのように判断・対応しているのかを見直すことが出発点となります。
たとえば、以下のような点は、一度立ち止まって確認しておきたいポイントです。
- LGBTQに関する社内方針やルールがあるか、明文化されているか
- 管理職や担当者が、相談を受けた際にどう対応するか共有できているか
- 通称名使用や相談対応について、判断基準が属人的になっていないか
制度を「設けたかどうか」だけでなく、職場としてどのような前提で運営されているかを把握することが重要となります。
法制度の動向とは切り分けて、職場としての対応範囲を整理する
同性婚訴訟をめぐる司法判断や最高裁の動向を背景に、2026年は法制度の変化に注目が集まる年になると考えられます。
しかし企業や職場では、法制度の結論を待つ以前に、すでに判断や対応を求められる場面が存在しています。
具体的には、次のような点について整理が必要となります。
- 福利厚生や社内制度のうち、異性愛カップルのみを前提としている部分はどこか
- 配偶者や家族の扱いについて、どこまでを企業として対応範囲とするのか
- 制度変更が難しい場合、その理由や考え方を社内で説明できるか
2026年には、「法律で決まっていないから対応しない」ではなく、自社としてどこまで対応し、どこからは対応しないのかを判断することが大切です。対応できない場合であっても、企業が当事者に向き合い、対話し、落としどころを見つけようとする姿勢が求められます。
企業の対応が、当事者の体験としてどう現れているかを把握する
PRIDE指標などを通じて、企業のLGBTQ対応は外部から評価されやすくなっている一方で、当事者が職場で差別や生きづらさを感じている現状も明らかになりました。
そのため2026年には、企業が掲げる方針と、現場の実感にズレがないかを把握することが欠かせません。
把握する方法として、たとえば次のようなことが考えられます。
- 匿名性が担保された社内アンケートやヒアリングを実施する
- 管理職や現場向けに、無意識の偏見を振り返る機会(研修・ワーク)を設ける
- 相談窓口や対応フローを明文化し、従業員に共有する
「取り組みをしていること」よりも、職場でどう受け止められているかに目を向ける必要があります。
LGBTQ+対応に関するよくある誤解・企業が迷いやすいポイント(Q&A)
Q1. 小規模企業や中小企業でも、LGBTQ+対応は必要ですか?
大企業と同じ制度を整えるのは難しいかもしれません。
ただし、職場での基本的な配慮や、相談があった場合の対応方針、不適切な言動を防ぐための考え方などを共有しておくことは重要です。これらが何も共有されていない状態は、現場で対応に迷いが生じたり、トラブルにつながったりする可能性があるからです。
なお、企業規模にかかわらず、LGBTQ+対応の必要性は高まっています。特に2025年以降、採用や人材定着の場面では、企業のDEI姿勢が応募者や従業員に見られるケースも増えています。
中小企業は経営者などトップの意思が反映されやすく、スピード感をもって意思決定できるため、制度が整っていない段階でも風土を変えていくことは十分に可能です。
Q2. 職場にLGBTQ+当事者がいない場合でも、対応は必要でしょうか?
対応を考えておくことが望ましいです。
「職場に当事者がいないから対応は必要ない」と感じるかもしれませんが、性的指向や性自認は外見から分かるものではありません。実際、職場でカミングアウトしていない当事者も多くいます。
また、LGBTQ+への配慮は特定の人のためだけでなく、誰もが安心して働ける職場環境をつくることにもつながる視点です。
Q3. 法律で義務づけられていない対応まで行う必要はありますか?
現状、LGBT理解増進法における事業主の対応は努力義務であり、必ずしも実施が義務付けられているわけではありません。
ただし2026年に向けては、法的義務の有無だけで対応を判断するのが難しい場面も増えており、また取り組み方次第では企業価値の向上につながる可能性もあります。
そのため、努力義務ではあるものの、自社としてどこまで対応するかを主体的に判断することが重要になってきます。
2026年に向けて求められるLGBTQ+対応は「現場への浸透」
2026年に向けて企業に求められるLGBTQ+対応は、大きな制度改革や新たな施策の導入だけではありません。
これまで整えてきた制度や方針が、実際の職場でどのように使われているかを確認し、自社の状況に合った形で見直していくことが重要です。
完璧を目指すのではなく、できるところから少しずつ取り組む姿勢が、安心して働ける職場づくりにつながります。
小さな一歩から始めたい企業は、アカルクへぜひご相談ください。企業の状況に応じた、無理のないLGBTQ+対応や職場環境づくりをサポートしています。
執筆者:佐藤ひより
大手メーカーの海外営業職を経験後、2018年にライターとして独立。フリーランスとして多様な価値観や働き方に触れる中で、「一人ひとりが自分らしく生きられる社会」に関心を持つように。現在は、キャリア・ビジネス・ライフスタイル分野を中心とした記事制作に携わっています。


