社会におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進を機に、性別、年齢、国籍、人種、国籍、人種、民族、信仰、障害、性自認、性的指向、性表現にとらわれず、すべての人が公平であるための仕組みや環境を整備する動きが増えてきました。
企業としても、LGBTQ+当事者の採用やLGBTQ+の社員を守る制度の策定が必要になってきています。
しかしながら、LGBTQ+という言葉がメディアで多く取り上げられる反面、言葉の本当の意味や、国内外の状況について知る機会はまだまだ多くありません。企業がLGBTQ+当事者を取り巻く環境をきちんと知り、多様な人材に対応するための正確な知識をもつことは、組織の文化醸成にかかせないものとなります。
本記事では、LGBTQ+の基礎となる用語の理解から、LGBTQ+と混合されやすい「SOGI」、国内外のLGBTQ+の実態、LGBTQ+の「アライ」について解説します。
LGBTQ+当事者がどのような立場におかれているのか、どのような課題を抱えているのかを意識しながら、想像を膨らませつつ学んでいきましょう。
LGBTQ+とは
LGBTQ+とは一体何を指し示す言葉なのでしょうか。
LGBTQ+とは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Queer・Questioning(クイア/クエスチョニング)の頭文字から構成されています。
幅広いセクシュアリティ(性のあり方)を総称する言葉であり、+(プラス)はそれ以外の多様な性の在り方を包括する意味を指します。
それでは、それぞれの言葉がどのような状態を示すのか確認していきましょう。
L:Lesbian(レズビアン)
レズビアンとは、女性として女性が好きな人のことを指します。
「レズ」という略語は、レズビアンへの蔑視や偏見を込めた歴史があります。そのため、略さずに使用することが求められます。
G:Gay(ゲイ)
ゲイとは、男性として男性が好きな人のことを指します。
ゲイにも、「ホモ」という蔑称が存在します。差別的な意味合いをもって使われてきた歴史があるため、使用には配慮が必要です。
B:Bisexual(バイセクシュアル)
バイセクシャルとは、好きになる人が男性と女性の両性を好きになる人のことを指します。
日本語では両性愛者とも呼ばれます。
T:Trans-gender(トランスジェンダー)
トランスジェンダーとは、心の性と体の性に違和感を感じている人のことです。
女性の身体的特徴を持ちながら自身を男性だと自認していたり、男性の身体的特徴を持ちながら自身を女性と自認している人のことを指します。
昨今、メディアでもトランスジェンダーに関するニュースが取り上げられるようになり、トランスジェンダーは身近な性として認識されてきています。
Q:Queer・Questioning(クイア・クエスチョニング)
クイア・クエスチョニングとは、性的少数者全般を指したり、自らの性のあり方について特定の枠に属さない人、わからない人のことを指します。
SOGI(ソジ・ソギ)とは
LGBTQ+と混合されやすい言葉として「SOGI」があります。SOGIはLGBTQ+とは違う表現として理解することが重要です。
まず、人のセクシュアリティは多様であり、人により傾向はさまざまです。そのなかでも性の4つの要素として
- からだの性(生物学的性)
- こころの性(性自認)
- 好きになる性(性的指向)
- 表現する性(性表現)
が挙げられます。
なお、本記事にある「からだの性(生物学的性)」について、現在は「法律上の性(出生時に割り当てられた性別をもとに戸籍等に記載された性別)」という表現を使用することが、LGBTQ報道ガイドラインに明記されています。
しかし、これまでわかりやすさを考慮し使用していた用語の解説として、今回の記事では便宜上「からだの性(生物学的性)」を使用します。
これら4つの要素うち2つの要素、好きになる性(性的指向)のSexual Orientation、こころの性(性自認)のGender Identityの頭文字をとり、「SOGI(ソジ・ソギ)」と総称します。
ここでは、「SOGI」に性表現(Gender Expression)、性的特徴(Sex Characteristics)を加えた「SOGIESC」についてそれぞれ解説します。
性的指向(Sexual Orientation)
性的指向(Sexual Orientation)とは、好きになる対象や性的欲求を感じる対象となる性のことを指します。
同性や両性を好きになる性的マイノリティ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)だけでなく、異性愛者を含めすべての人が持っている属性になります。
形成要因としては、遺伝子やホルモンといった生物学的な要因から、個人の経験や心理的要因があると言われています。
性自認(Gender Identity)
「性自認(Gender Identity)」とは、自分の性別をどのように認識、自己定義しているかを指します。生物学的な性とは異なり、心理的な性別の認識のことです。
形成時期は、幼少期から始まるとされ、成長とともに自覚が強くなる傾向にあると言われています。
性表現(Gender Expression)
性表現(Gender Expression)とは、服装や髪型、しぐさ、言葉遣いなど、性別に関連する自己表現の方法を指します。社会的な性別規範にとらわれず、個人の意思や快適さに基づいて表現されます。
個人の趣向や価値観、文化的な背景が影響していると言われています。
性的特徴(Sex Characteristics)
性的特徴(Sex Characteristics)とは、染色体、生殖器、ホルモンバランスなど、身体的な性に関する特徴を指します。これらは明確に男女のに分類に当てはまるわけではありません。
形成要因は、遺伝的要因、胎児期のホルモンの影響などが挙げられます。
LGBTQ+とSOGIの違い
あらためてLGBTQ+とSOGIの違いを整理すると、LGBTQ+が性的マイノリティの総称であり、SOGIはすべての人が持っている属性(性的指向・性自認)であるということです。
この記事の筆者も読者も保持しているであろう、セクシュアリティやジェンダーアイデンティティのことであり、すべての人がSOGIの当事者であるといえるのです。
世界・国内の状況
LGBTQ+当事者は日本だけではなく、世界中に存在します。国内と合わせて世界の状況もみていきましょう。
国内でLGBTQ+に該当する人の割合
電通グループによる電通ダイバーシティ・ラボ「LGBTQ+調査2023」によれば、国内57,500人を対象にスクリーニング調査を実施したところ、LGBTQ+に該当する人の割合は約9.7%という統計が出ており、10人に1人はLGBTQ+に該当するとのことでした。
この数値から、この記事を読んでいる方の身近に、LGBTQ+当事者がいると考えても何ら不思議ではありません。
世界の同性婚事情
次に、世界の同性婚事情はどのような状況なのでしょうか。
「LGA Worldの報告書(2020年12月)」によれば、同性婚・婚姻とほぼ同等の代替制度がある国は、アメリカやヨーロッパが多く、世界で見ると約33%の64ヵ国が該当します。一方で、ロシア、アフリカを中心とした国は性的指向が理由で迫害・罪に問われてしまいます。その国数は約45%、88ヵ国にものぼります。
日本の同性婚事情
さらに、日本における同性婚の状況について見てみましょう。
日本において同性婚は認められていないものの、「同性パートナーシップ制度」として自治体が単独で認めている制度があります。「同性パートナーシップ制度」とは、各自治体が同性同士のカップルを婚姻に相当する関係と認める証明書を発行する制度のことです。
実例として、2015年に東京都の渋谷区と世田谷区が施行を開始し、2024年10月1日時点の日本において、約470の自治体でパートナーシップ制度の施行がされています。
しかしながら、あくまで「パートナーシップ制度」は法律上の「結婚」には該当しないため、相続といった問題については解決できません。
世界と日本の比較
世界と日本を比較してみると、2024年10月31日時点で、G7の中で唯一日本だけが、同性婚を認める法律やLGBTQ+への差別を禁止する法律がない状況です。また、OECD(経済協力開発機構)の調査結果によると、日本におけるLGBTQ+関連の法整備状況は35ヵ国中34位という結果が出ています。
日本社会として、多様性を意識した法整備は20年前に始まりました。しかしながら、まだ道半ばであり、日本として制度をどのように構築していくか、検討段階が続いている状況です。
法律として制定されていない状況であっても、LGBTQ+当事者はもちろんのこと、その家族、友人、同僚が今の状況を知り、誰もが暮らしやすい世の中になるにはどうすればいいのか、を考えていくことが大切です。
アライとは
次に「アライ」について学びましょう。
「アライ」とは、英語の「同盟、支援」を意味する「ally」が語源となっています。
LGBTQ+に代表される、性的マイノリティを理解し支援するという考え方やそうした立場を明確にしている人々を指します。
「アライ」になるために資格は必要ありません。「アライ」はLGBTQ+について知ることで、寄り添う姿勢を表明する人もいます。さらにLGBTQ+当事者の力になりたいという強い思いで声を挙げ、実際に行動を起こす人もいます。「私もアライになってLGBTQ+のサポートがしたい」と思っている方に、具体的な支援内容をご紹介します。
一例ですが、「アライ」具体的な行動については以下が挙げられます。
- LGBTQ+について学ぶ
- 当事者の声に耳を傾ける
- 正しい知識を身につけ、差別的発言などを耳にした際には注意や話題を変える
- LGBTQ+フレンドリーな企業や団体の活動を支援する
- 仕事環境や学校といった身近な場所の改善を探る
アライである人々が全員アライであることを表明するわけではありません。しかし、アライの存在を確認できてこそ、LGBTQ+の当事者は自分の性的マイノリティについて相談しやすくなることは事実です。アライの存在が見えることは、LGBTQ+の当事者にとっては心理的安全が深まるといえるでしょう。
まとめ
今回は知っておきたいLGBTQ+の基礎知識について解説しました。
改めて、本日学んだポイントをおさらいしましょう。
- LGBTQとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Queer・Questioning(クイア/クエスチョニング)の頭文字で構成された幅広いセクシュアリティ(性のあり方)を総称する言葉
- LGBTQ+の+(プラス)は、LGBTQ以外の多様な性の在り方を包括すること
- SOGIとは、すべての人が持つ性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)のこと
- 「アライ」は性的マイノリティを理解し寄り添いたいと考える人、または実際に活動している人
LGBTQ+についての理解を深めていただけたでしょうか?
LGBTQ+当事者ではなくとも、ダイバーシティ&インクルージョンという環境のなかでは、この記事を読んでいるあなたも、多様な人材のひとりであることに違いありません。
本記事で学んだことを心にとめ、具体的にどのようなことができるかを想像しながら、昨日とは違う視点でLGBTQ+課題について考えていきましょう。
株式会社はアカルクは、ダイバーシティ推進のための取り組みをはじめ、LGBTQ+の方がどのようなことに配慮が必要なのか、多様性を意識した採用コーチングから、入社後のガイドラインの策定、制度構築、運用を一気通貫で行う人事コンサルティング、キャリア支援といったプロデュース事業を展開しています。
LGBTQ+に対応する制度の策定をしていきたいといった、課題がある人事担当者や採用担当者の皆さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。