地域のために 地域と共に
取り組みとその背景
堀川:最初に、真成会さんについて、今どんな活動をされているのか、なぜ設立したのか教えてください。
箱田:NPO法人真成会は、立ち上げから今年で14期目を迎えており、主に大阪市都島区を中心に障害者支援を広く展開しています。
今行っている事業は、就労継続支援B型が2つ、それに付随してカフェが2店舗、他にもヘルパー事業や、障害のある方と一緒に出かけるなどの居宅介護事業、訪問看護ステーション、福祉サービスの相談支援事業なども行っています。
堀川:かなり幅広い展開をされているのですね。箱田さんは真成会さんを立ち上げる以前から、障害のある方に関わるお仕事をされていたとのことですが、このお仕事を選ばれたきっかけは何だったのでしょうか。
箱田:もともと私は介護福祉士を目指して専門学校に通っていて、高齢者介護の仕事に就こうと考えていました。そんな中、ある実習で障害のある方と一緒に動いたり楽しんだりする場面を通して「自分は絶対にこの業界だ」と強く感じ、介護福祉士だけでなく社会福祉士の勉強もするため専門学校2年次に大学へ編入し、卒業後は支援員として働いていました。ただ、以前の職場で仕事をする中で「もっとできることがあるんじゃないか」と感じていたことや、以前の職場が障害のある方に対して差別的な部分もあり、それなら自分で立ち上げて自分のやりたい支援をして、利用者さんの生活にコミットできる働き方をつくりたいと思い、法人を立ち上げました。
実際の環境や課題
堀川:現在、真成会さんではどのような障害のある方が働いていらっしゃるのでしょうか。また様々な障害のある方と向き合う上で、大切にされていることはありますか?
箱田:知的障害の方を中心に、ASD(自閉症スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)などの発達障害の方、うつ病などの精神障害の方が毎日頑張って働いてます。
障害や一人一人の特性によって必要な支援が異なるので、それぞれに合わせた関わり方を意識しています。例えば、知的障害のある方の場合、毎日真面目に通ってくれているものの、一つの仕事を覚えるまでに3日で覚える方もいれば半年、1年とかかる方もいます。僕たちはそこに根気強く付き合い、できないことが一つでもできるようになって、自信をつけていけるような支援を行っています。
また、精神障害のある方は気持ちに波が生じるので、その波ができるだけ小さくなるよう「大丈夫?」といった日々の声かけや、普段からのコミュニケーションを大切にしています。
堀川:一人ひとりに合わせた関わりを大切にされているんですね。一方で、日々の現場や障害のある方を取り巻く環境について、どのような課題を感じていらっしゃいますか?
箱田:現場の課題はいろいろありますが、一つは「社会的な課題」として障害に対するネガティブなイメージがまだ残っていることです。就労継続支援B型事業所についても、一部のニュースなどによって誤解やマイナスのイメージを持たれてしまうことがあります。
また、事業所として利用者さんに継続して十分な仕事を提供していくことの難しさもあります。障害のある方の雇用先という点でも、企業には法定雇用率が定められていますが、障害のある方の雇用や受け入れに対する理解は、まだ十分に進んでいないと感じています。
コラボレーションについて
堀川:今回のコラボにも通じる部分ですが、アカルクでは普段企業さんに対してLGBTQ+をはじめとするDE&I推進のお手伝いをしています。今回、レインボーフェスタでキッチンカーを出したいと考えたときに、真成会さんがカフェを運営されていること、そして入り口は違っても目指している方向には重なる部分があると感じ、お声がけさせていただきました。
改めて、今回のコラボを受けてくださった理由を教えていただけますか?
箱田:純粋に楽しそう!というのもありますが、大きな理由として障害のある方が一生懸命働いている姿を多くの人に知ってもらいたい、ネガティブなイメージを払拭したいと思ったからです。
世間的にはまだ「障害のある人って本当に働けるの?」と思われていたり、最近のニュースでも「家でサボテンに水をやるだけでお金がもらえるのか」といった極端な取り上げられ方をされたりすることもありますが、実際には就労支援の現場でみなさん一生懸命働いています。
そうした姿を知っていただける良い機会だと思い、今回のコラボのお話をお受けしました。
箱田:利用者さんたちの反応としては、LGBTQ+のイベントだからと構えることもなく、純粋に楽しみにしています。これまでこうしたイベントに深く関わる機会がなかったので、利用者さんたちにとっても今回の参加によって、LGBTQ+への理解が深まるとても良い機会になるのではないかと思っています。
カフェについて
堀川:現在、天満(なかにわCAFE)と都島(CAFE JIN)の二店舗でそれぞれ働く環境に違いはあるのでしょうか?
箱田:天満の店舗は企業さん(中西金属工業株式会社)のご協力もあり、天神橋筋商店街というすごく恵まれた場所でやらせていただいていて、一見のお客様が多く忙しい環境です。その分、利用者さんにとっては、よりレベルアップした働き方を提供できますし、「こうした場所でも就労支援ができるんだ」と周囲に知っていただける良い機会になっています。一方で都島は常連のお客様が多く、就労支援について理解してくださっている方も多いので、比較的安心して働きやすい環境が整っています。
もちろん事前の面接はありますが、本人の希望に応じて自分に合った環境に挑戦できるようになっています。
堀川:普段カフェを運営される中で、障害のある方がスタッフとして働くために工夫されていることはありますか?
箱田:まず、メニューをチェックするだけで注文を受けられるような分かりやすい仕組みを作りました。さらに、業務をあえて細かく分けることで「できる仕事」を増やしたり、それぞれの仕事内容に連続性を持たせて覚えやすくなる工夫も重ねています。
そうした環境づくりもあって、今ではみんな慣れてパパッと動けるようになりましたけどね(笑)
中には、独学で練習してラテアートを淹れられるようになった利用者さんもいるほどです。
あとは現場ではできるだけみんなが楽しくいられる環境を常に作りたいと思っています。
環境へのこだわり
堀川:真成会さんでは働き方だけでなく、働く環境そのものも大切にされているんですね。カフェも、いわゆる「福祉施設らしさ」を前面に出すのではなく、とてもおしゃれな空間になっていますが、そこにはどのような思いがあるのでしょうか?
箱田:まずは、障害のある方が働く場所に対するイメージを変えたいという思いがあります。
昔ながらの「福祉施設だからこういう場所」というイメージではなく、障害があってもなくても「こういうところで働いてみたい」と思える場所にしたかったんです。そのために空間にもこだわっていますし、先ほどお話ししたように仕事を細かく分けるなど、一人ひとりが働きやすくなる工夫もしています。
堀川:お話を聞いていると、「福祉だからこうする」というよりも、「みんなが楽しめること」を一貫して大切にされているように感じます。そうした働く環境をつくる上で、特に大切にされていることはありますか?
箱田:そうですね。一番大事なのはコミュニケーションだと思っています。これは障害のあるなしは関係ない気もしますね。
仕事も黙々とするのではなく、喋って関わりながらやることを大切にしています。
日常の何気ない会話の中で、例えば「実は昨日お母さんと喧嘩してん。」とぽろっとこぼしてくれたときに「話聞くわ、大丈夫?」みたいなところから支援に結びつけていくようにしています。
むしろ、知的障害のある方にこちらが助けられている面もありますね。
こちらが遠慮して言わないことも「箱田さんどうしたん?怒ってんの?」って素直に聞いてくるので、逆にハッとさせられたり、思わず笑ってしまったりします。
以前は黙々と作業することが求められる職場で働いていたのですが、そこでは職員と利用者さんとの間に距離ができてしまっていて、「自分がやりたいのはこういうことじゃないな」と感じていました。だからこそ、自分で立ち上げたときは会話を大切にしながら仕事をしようと決めていました。
堀川:コミュニケーションを積極的にとることで、心理的安全性が高い職場づくりが日常的に自然と実現されているんですね。
組織内のDE&I推進はどうしても制度や施策に目が向きがちですが、今のお話のような日常の関わりや風土づくりが根幹になるなと改めて感じました。
目指す未来
堀川:最後に、真成会さんがこれから目指すビジョンを教えていただけますか。
箱田:「地域のために地域と共に」という言葉通り、やっぱり軸にあるのは”地域”ですね。
全国的に何かを変えることはなかなか難しいと思いますが、目の前の地域や人は一緒に変えていけると思うので、これからも地域に密着しながら、地域の困りごとに向き合い、ものづくりやまちづくりにつなげていきたいと思っています。
箱田 成司
NPO法人真成会理事長 / 株式会社freely代表取締役
大阪市を拠点に就労支援や訪問看護・地域福祉・教育活動などを展開。ソーシャルワークの理念に基づき、障害者の社会参加や働く場づくり、地域と福祉の連携に取り組んでいる。
堀川 歩
株式会社アカルク代表取締役
700件以上の研修・講演を行うほか、制度設計や職場環境の改善を通じて企業や自治体のDE&I・LGBTQ+推進など多様な人が安心して働ける組織づくりに取り組んでいる。



